「わかんねえよ、お前には。」中村屋酒店の兄弟 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
わかんねえよ、お前には。
本日、ラジオドラマ~本編~短編ドキュメンタリーの順で上映し、そのあとトークイベントあり。
"とある田舎町、潰れかけの「中村屋酒店」という個人商店がありました。店には、弘文という兄と、和馬という弟の兄弟がいました。" ・・・・・もうこれだけで、物語の大半が出来上がっているようなものだ。
このチラシを目にした時から観たくてしょうがなかった。なぜか?それは、この物語の何割かは、僕自身の物語だから。田舎の酒屋を継いだ兄と、その弟の僕。シンパシーを感じずにはいられなかった。
継ぐことが宿命だった兄は、弘文のように言葉少なく、それでいておおかたのことはわかっている。
外に出た僕は、気まぐれに帰省しては、兄の苦労も知らずに「変わってねえな」と愛想を振りまく。
まんま、うちの兄弟だ。(人に後ろ指をさされるような罪は犯してないけど)。おそらく兄は何かにつけ要領のよかった僕に嫉妬してたはずだ。損な役回りばかりの自分が嫌だったはずだ。だけどそれを口にしない。みんなまとめて呑み込んでおく。そんな兄だった。そして僕は、それをわかっていた。自分でもそれが狡いことだということも。
落語「鼠穴」でもそうだが、人にも自分にも厳しい堅実な兄と、人にも自分にも甘いお気楽な弟っていう図式は、世の中のデフォルトなのだろうか。そして、兄の思いに気付いたのち、それを燃料に前に進もうとする弟っていうのも、そうなのだろうか。
映画が短い、という意見もある。だけど、この短さだからこそ、感情の合間を駆け抜けていって、そのあとに残像のように残るシルエットもある。そう、いま、こいつ何考えている?という和馬のドアップが、脳裏に焼き付いているように。
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