「それでも生きてほしい。」滑走路 はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
それでも生きてほしい。
飛行機が滑走路から飛び立ってゆく。
空に憧れる学級委員長。陰湿ないじめに苦しみながらも耐え忍ぶ日々。
叱責や理不尽、加えての激務に押し潰されそうな不眠症を患う若き官僚。
一見優しい夫。でも大切なことは何も選択してくれない。その関係に悩む切り絵作家の妻。
中学校、職場、家庭。3つの時間軸を利用して物語が進んでゆく。そして中盤。驚きと共にそれは全く違ったストーリーへと変貌する。なんだか余計に辛い。
なんて苦しいのか。なんでこんなに傷付くのか。どうすれば楽になれるのか。周囲からは前向きに見えても突然自ら命を絶つ人がいる。深いところに溜まった痛みはそう簡単に取れるものではないと痛感させられる。
役者陣がみんな良かったです。浅香航大も今までのイメージとは違った感じですごく合ってました。水橋研二にはイライラしたし、いじめっこ達が決して不良ではないってとこが妙にリアルだった。
そして委員長を演じた寄川歌太。なんて真っ直ぐで綺麗な瞳。好演でした!
3人それぞれが迎えるエンディング。誰だって多かれ少なかれ苦しみを抱えている。それがどんなものであっても、それでも生きてほしい。
滑走路を少年が疾走している。宝物を背負って。少女を探して。なんて淡い。そしてなんて清々しい。
めちゃめちゃ良作だと思います。
私は好きです。
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