「ずーっと、しんどかった」空白 ツネミさんの映画レビュー(感想・評価)
ずーっと、しんどかった
・話を聴いてもらえない花音と松坂桃李を観て聴いてくれない事がとにかく苦しくて、たまらない事なんだと思った。特に松坂桃李は古田新太と寺島しのぶに挟まれて最悪すぎると思った。
・結局、松坂桃李はバックヤードへ花音を連れて行ったけど何をしたのかは描かれたなかったのが気になった。そういった演出があって松坂桃李に非はないとは言い切れない感覚になったまま話が進んでいくのが凄いなぁと思った。案外、古田新太の妄想と思われた痴漢のような事をしていたんじゃないかと最後まで謝罪する姿を観ていて思った。けれど、現場に立ち会う事なく、話だけでその人の普段の言動で、話を信じたり信じなかったしているんだと普段、自分が無意識に行ってる判断を振り返させられた。個人的には松坂桃李があれだけ謝ってるのは何か事故死に追い込んでしまった事以外にあったんじゃないかと思えてならないけど、深読みか。
・寺島しのぶの感じが凄かった。私が若かったら的なセリフが出て、冒頭の印象だったらそう思ったかもしんないけど、性格の問題を年齢の問題に転化してる事に気づいてない感じが怖くて切なくて痛々しかった。松坂桃李の気を遣ってる感じもかわいそうだった。
・全てのシーンが暴力的なシーンの前振りに感じられた。また、気が緩むような楽しいシーンが一切なくて古田新太が出てくるとしんどかった。あっという間で、とても面白かった。
・あの父親で娘の花音があの感じなのが驚いた。
・登場人物のほぼ全員の裏面というか悪い面も描かれてて怖くなるぐらい登場人物がリアルに感じられた。花音の万引きに始まり、松坂桃李のパチンコの話、寺島しのぶのボランティア仲間などへのパワハラ、担任の先生の冷たい対応、先生らのいじめはないの一点張り対応、最初に飛び出してきた所をひいてしまった女性の自殺…などの闇を抱えて葛藤する演技がリアルで人間不信になりそうだった。その人が良い人がどうかとかを決めてるのは、その人の一側面でしかないんだと考えさせられた。
・古田新太がずっと花音は万引きしてないっていって、部屋から万引きしたと思われる化粧品を見つけて個人的にほら!してたじゃないか!謝ってこいよ!と思ったけど、こっそり公園に捨ててて汚ねぇ!って思った。
・出てくる風景の寂れ具合がたまらなかった。スーパーと自殺してしまった女性の家、後半のドライブインみたいなとこ。主人公の古田新太の家だけ新しそうで不思議な感じがした。
・後半に古田新太が亡くなった娘を理解しようと絵を描いたり漫画を読んだりして性格が少しずつ柔らかくなっていきかけたところで救いを少し感じられた。皆、どう折り合いをつけているのか?は、誰にもわからないだろうなぁと思った。とはいえ、事故死しなかったら、あの横暴な感じのまま80歳とかになったのかもしれないと思うと、複雑すぎる。
・自殺してしまった女性の葬式で母親が古田新太に弱い娘に育てた私の責任ですというような事を言っていた。何となく、弱い気質っていうのはあるのか、あったとして教育で何とかなるのか、どっちなんだろうと思った。
・改めて考えるとやっぱりしんどい映画だった。家で観てたら途中であきらめてたかもしれない。映画館で観られて本当に良かった。