劇場公開日 2020年8月22日

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「生きるとは命を奪うということ」僕は猟師になった 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0生きるとは命を奪うということ

2020年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

京都の森でイノシシやシカを狩って食べるという生活をしている男性に密着したドキュメンタリーだ。当たり前のことだが、生きるとは他の命を奪うということだ。菜食主義かどうかは関係ない。命は命であり、そこにいかなる線引きもできない。しかし、現代人は、命を奪う仕事を効率的に他者に任せることによって、「生きるとは命を奪うこと」という当たり前を忘れることのできる生活をおくっている。
この映画は全編、本物の命のやりとりの迫力に満ちている。しかし、本人にとってはそれは日常に過ぎない。本当はこれをすごいと思ってしまう我々の方が、命の基本原則から外れている。「命を奪うことに慣れることはない」と彼は言う。日々、奪った命の重みを実感することで自分の命の重みも知ることができる。
大きなイノシシとの一騎打ちはスリル満点だ。並の映画では到達できないとてつもない緊張感がみなぎっていた。

杉本穂高