「「タイムリープ×ヤンキー」という異色作」東京リベンジャーズ といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
「タイムリープ×ヤンキー」という異色作
私はタイムスリップ系作品が好きです。
私が観た映画でも『時をかける少女』『ルーパー』『バック・トゥ・ザ・フーチャー』『バタフライエフェクト』などの名作映画がある映画ジャンルですし、映画以外にも『シュタインズゲート』というアニメ(原作はゲーム)も好きです。
本作は、そんな名作映画が犇めく「タイムスリップ」ジャンルに殴り込みをかけてきた「タイムリープ×ヤンキー」映画です。原作漫画やアニメ版は未鑑賞ですので、「原作と比べてこうだった」という比較ができず、映画単体としての評価になります。
結論から言えば、かなり楽しめました。タイムリープのシステム的にも面白かったですし、「この行動を取れば未来が変わる」という明確な目標が設定されているので、非常に観やすく楽しめました。タイムリープものって時系列が入り乱れて複雑になることが多いんですけど、本作は非常に分かりやすかったですね。「タイムスリップ映画」としても「ヤンキー映画」としても高品質な作品でした。
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何をやっても上手くいかないフリーター生活を送っていた花垣武道(北村匠海)。ある日、高校時代の恋人であった橘日向(今田美桜)とその弟の直人(杉野遥亮)がヤクザと半グレの抗争に巻き込まれて死んだというニュースを目にする。その翌日、駅のホームで電車を待っていた武道は何者かに背中を押されて線路に落とされた。電車に轢かれそうになった瞬間、武道は10年前のヤンキー時代にタイムリープしていたのだった。10年後に死ぬ運命にある元恋人を救うため、10年前の世界で武道は行動を起こす。
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まずこの作品、タイムリープ映画としてかなりクオリティが高い。
武道は17歳の時に東京卍会に所属するキヨマサというヤンキーに喧嘩で負けて奴隷のように扱われていたことがきっかけで高校を中退し、その後はヤンキーとは関わらず10年間フリーター生活をしていました。そのため、10年前の東京卍会が何故ここまで勢力が巨大化し、一般人に手を出すようなならず者になってしまったのかを知らないわけです。10年前と現代を行き来しながら、「何故東京卍会は変わってしまったのか」を探るという展開は、非常に面白かった。
タイムリープものの映画には色々種類がありまして、本作は元恋人が死ぬ未来を変えるための物語なので「タイムパラドックスを起こすことを目的とした」物語であり、過去改変によって世界線が分岐するのではなく、同じ世界線の未来が変わるタイプのタイムリープ設定になっています。他の映画で言えば『時をかける少女』と同じ系統のタイムリープですね。タイムリープのキーパーソンである橘直人はタイムパラドックスが起こったことを認識しており、姉を救うために武道のタイムリープに協力します。私個人的にこの系統のタイムリープ作品が好きなので、結構ハマりました。
そして、ヤンキー映画としても押さえるべきポイントを押さえた作品になっていると思います。
私はあんまりヤンキー映画観ないんで的外れなこと言ってるかもしれませんが、ヤンキー映画で重要なのって「少年期の爆発力」「仲間との友情」って点だと思ってます。ジュブナイル映画と近い魅力があると思いますね。自ら危険なことに首突っ込んだり仲間とバカやったりするのが楽しいんです。その点で言えば、「元恋人を救うために」という当初の目標以外にも「仲間を救うために」という追加の目標も出てきて、かつての仲間のために命を懸ける展開は胸が熱くなるものがありました。
夏祭りのシーンとかで「武道が童貞卒業してもいいのか」「それはダメだ!!」ってやり取りとか、もしかしたら女性はあまり共感できないかもしれませんが、思春期男子のあるあるなんで笑っちゃいましたね。日常会話のシーンもダレることなく結構面白かったです。
ただ、不満点が二つほどありました。
1つ目は、「武道が直人以外の人にタイムリープについて喋らなかったこと」です。
「彼女の弟」という遠くも近くも無い微妙な関係性の人にはタイムリープのことを説明したのに、近しい仲間には一切説明しないのは違和感がありました。物語後半であっくん(千堂敦)が「お前タイムリープしてるだろ」と、武道のタイムリープを暴くシーンなどはありましたが、それ以外に武道がタイムリープのことを他の人に喋っている描写はありませんでした。普通タイムリープして未来を変えたいのだったら、タイムリープについて説明して、状況を理解してくれる仲間を増やすべきじゃないでしょうか。もしくは、「タイムリープについて他の人に話せない具体的な理由がある」とか「他の人にあれこれ説明を試みたけど理解してくれなかった」という描写を入れる必要があったと思います。原作でどのような描写になっているのかが分からないので原作からある問題点なのか映画化にあたって尺の都合でカットされてしまったのかは分かりませんが、この手の作品には必要な描写だったと思います。
2つ目は「不要なキャラや描写が多い」ということです。
具体的に言えば清水尋也さん演じる半間修二です。意味ありげに登場するしキービジュアルにも「メインキャラですよ」って面して出てますけど、劇中では一切ストーリーに絡んでこないキャラクターです。なんで出したのか全く理解できないですね。もしかしたら「原作で出てたから」って理由で登場させたのかもしれませんが、ストーリーに関わらないならカットするべきですし、続編作る気で登場させたのであれば「続編のために不要なキャラ出すな」と思います。
英勉監督って、以前公開された『賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』でも本編に関わりないキャラクターいっぱい出してましたけど、それをファンサービスだと思ってるならやめた方がいいですよ。私は賭ケグルイ原作全巻持ってるくらいのファンですけど、好きなキャラの扱いが雑過ぎで「こんな適当な扱いするなら最初から出すな」ってキレ散らかしたんで、「出せばいい」ってもんじゃないですよ。
上記のような些細な不満点はありつつも、全体的に見れば面白くまとまった傑作映画だったことは間違いないです。オススメです!!