「死してなお「皇帝」の座に君臨する「鉄の人」」国葬 h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
死してなお「皇帝」の座に君臨する「鉄の人」
20世紀を代表する独裁者で大量虐殺者の葬儀を貴重な映像資料でまとめたドキュメンタリー。NHKの「映像の世紀」も優れたドキュメンタリー作品だが、カメラの目線の先にソビエト連邦の指導者よりも旧構成共和国の市民に向けられているのがこの作品の特徴。
「国父」の死に対し涙を流すものいるが、大半の市民は能面のように無表情なのが強烈に印象的。相互監視システムと恐怖政治から解放される喜びはそこにはなく、誰が後継者になっても同じことが繰り返されるだけでは、との恐怖とあきらめの表情にもみえる。これが20世紀最大級の虐殺と飢餓をうんだ独裁者の政治の成れの果てなのかとあらためて愕然とする。
スターリンについて、死去後たびたび批判と名誉回復を繰り返されてきた。現在のロシアでも「大ロシア主義」を目指すアイコンとしてスターリンの再評価が高まっていると聞く。
本作品がスターリン賞賛のプロパガンダに悪用されないことを願いたい。
コメントする