劇場公開日 2021年9月17日

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「軽やかそうで実はかなり重い青春映画」君は永遠にそいつらより若い グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5軽やかそうで実はかなり重い青春映画

2021年9月18日
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鑑賞方法:映画館

自分は、ある部分において決定的に欠けている。
そのことを自覚しているけれど、元々欠けているものはいくら努力しても埋めることができない。

いやそんなことはないよ、と慰めたり、根拠の無い〝大丈夫〟を繰り出したりして、安易に慰めたりは、この映画はしてくれません。

冒頭のゼミの飲み会。
他の映画であれば、ホリガイはきっとあそこで、あのセクハラ粘着質男に、ビールかツマミを投げつけていたはずです。でも、根本的に何かが欠けている自分には、他人を責める資格はないという気持ちのほうが突発的な怒りよりも優ってしまう。決して冷静に自己抑制しているわけではなく、自分の感情を他人にぶつける行為にはどうしても躊躇してしまう。

至らなさを自覚していることで、自分に抑制をかけているホリガイとは対照的に、自分の感情を少しも整理しないまま、他人にぶつけることで憂さを晴らしている、未熟でタチの悪い攻撃的な男ども。

前半はほろ苦いというよりも、痛過ぎる青春が描かれます。そこに、人には言えない傷を抱えた者、焦燥感に苛まれる者などがちょっとしたきっかけで関係してきます。

後半になると、『万引き家族』で描かれたような、現代日本の抱える歪みが、どうやって今の若者たちに影響を与えるのかということの一部の事例が重く、リアルに描かれます。
もうすぐ公開予定の『護られなかった者たちへ』の原作を読んだばかりですが、この映画にも、護られるべき時に護ってもらえなかった人たちが出てきます。
その時、その場にいて護ってあげられなかったことが悔しい。そう言ってくれる友人の有り難さと、自分の傷の深さ。

昨日見たニュースの中で、とある総裁候補が、『強く美しい日本を作る』みたいなことを言っていましたが、今の日本の現状でそんな上っ面な言葉を平気で言えること自体、その方に決定的に欠けているもの、見えていないものの大きさ、テレビでは言わない本音のおぞましさを物語っているようでした。

このタイトルに込められた意味が、勝ち誇ったように相手にぶつける言葉なのか、それ以外に勝てることがない絶望を表す言葉なのか、一見反目的だが融和を目指す言葉なのか、結構眠れなくなるほど悩むことになります。

話がとっ散らかってしまいましたが、とても胸に迫る、そして相応の覚悟を持って作ったのであろうことが伝わってくる上質の作品です。

グレシャムの法則