「牛乳を盗む…誰から?」ファースト・カウ shironさんの映画レビュー(感想・評価)
牛乳を盗む…誰から?
どの映画もファーストシーンにはこだわっていると思うので、そこを語るのは野暮なのですが…それを承知のうえで。
四角い画面(スタンダードかな?)を活かす演出に心を掴まれました!!
ゆっくりと近づいてくる船…
まだ船……まだ船……船デカッ!笑
映画で見えていることは切り取られている一部に過ぎないことを再認識させられると同時に「このサイズ感の驚きと興奮をもたらす映画ですから。」と観客に向かって語りかけてくる。
実際、物語の展開がスリリングで、終始ドキドキハラハラ。
先に結末を知っているにもかかわらず、ラストは祈りながら観ていました。
「どうか、どうかお願いだから!」
お願い?誰に?何を?
ここまで2人にのめり込んでいる自分に驚きました。
悲しくも幸せな、複雑な高揚感に包まれます。
2人が出会ったから夢が描けた。
腕は良いけど優し過ぎる男と
商売っ気はあるけど元手が無い男
1人で完璧な人間を目指すのは大変だけど
2人で補い合えばちょうど良い。
四角い窓から薪割りするキング・ルーの姿が見える…自然に箒を手に取るクッキー。
これをワンショットで納めるセンス!
最高やね。
家族でも恋人でもない、友情ともちょっと違う。でもお互いに必要不可欠な存在。
あらすじにも書かれてある通り、ミルク泥棒の話しです。
でも牝牛は自分の仔牛の為に母乳を蓄えているわけで…そもそも人間はそれを横取りしているのよね。
しかも本人の知らないところで売り買いされて連れてこられて。
クッキーの優しい心に触れて、感謝の気持ちが溢れてきました。
過去から地続きに今がある。
1人でも生きていける世の中ですが、お互い頼り合ったほうが半分で済むこともある。
人間も動物なんだし、みんなの凸と凹を合わせて一人前で良いんじゃない?
でも、あの時代のあの場所だから?
今の社会でも時として“優しすぎる”は命とり。
残酷な現実を生きる為に心を麻痺させている人々のなかで
生きづらさを感じているクッキーがいるだろう。
過去の地続きに今がある。
Mさん、2回目ご覧になったのですね!
そうなんですよ。あのシーンにはクッキーの優しさが溢れていて…
でも、あの時代のあの場所で、この感覚を持っていると、生きづらいだろうな。
一攫千金狙いの油断ならない奴らの中で“優しすぎる”は命とり。
キング・ルーと出逢えたことで自分らしさを活かすことができた。
きっと、クッキーのスイーツは優しい味がするんだろうな。
2回目の鑑賞。
いいですね。この映画。
最初、「旦那さんが亡くなって、大変でしたね。子どもさんも・・・」みたいな言葉を誰にかけてるのか、まったくわからなかったのですが、雌牛にかけてる言葉だったんですね。今回、初めて気づきました。
その言葉かけ1つでも、主人公の優しさを改めて感じました。
「どうか何事も起きませんように」と、やはり今回も祈ってしまいました。
Mさん、コメントありがとうございます。
祈っても結果は変わらないのに、祈らずにはいられませんでしたよね。
ずっと過去の物語なのに、しかもフィクションなのに、こんなにも心を動かさせる。
改めて映画の力を感じる作品でした。