劇場公開日 2021年6月11日

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「静かに、ただ静かに人間の心情がうごめいている」逃げた女 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5静かに、ただ静かに人間の心情がうごめいている

2021年6月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ホン・サンス監督作品ってきっと初めての鑑賞です。
最初からびっくりです。終始ワンカメとズームのみの映像。そしてただただ会話が繰り広げられる。いきなり置いてけぼりにされそうででした。

なんでこんな撮り方してるのか?、、、あくまで僕の主観ですが、、、変わらぬ映像構成だからこそ、明瞭に伝わるものがあったのでは?と思います。
定点カメラのように条件を固定するからこそ見えてくる会話内容、表情や仕草の些細な変化があるんだと思います。それらを通して「目に見えない心情」を映し出したかったのではないかなぁ?って思ってます。
主人公ガミの感情が揺さぶられている様が伝わってくるんです。彼女の違いや違和感を拾えるのです。そしてその違いというものがガミの心情やその背後にある人生、生活みたいなものを映し出そうとしているのではないだろうか・・・・と思いました。

そのような演出で際立つ会話シーン。なんの変哲もない会話です。よくあるシーンですが、つめこまれている情報量がとんでもなく多いです。
ガミが先輩や旧友を訪ねて会話する。相対する人が変われば口調も表情も仕草も変わる、嘘も言う、奇妙にも同じ報告をする、、、なぜそうするのか?それを言うのか?に想いを巡らせれば、人となり、性格、人間関係やその経緯を語るに足るのではないかと思うのです。「あいつには言えるけど、こいつには言えない」みたいなモノかな?

すごく興味深い演出のアプローチであり、見事な脚本ではないか?と思いますし、演者の力量があってこそ説得力ある映像になったんだと思います。

作り手の意図を十分汲み取れているかどうか?は横に置いといて、僕はガミの今とこれまでをイメージ・・・いや妄想か?・・・できました。きっと、ガミはこのような理由でこんな事をしているんだろう。そんなに好きではない旦那との結婚生活がもとで、、、みたいに。
題名もめちゃくちゃしっくりきてます。うん、確かにって!

きっと見る人によってガミの人物像は変わるんじゃないかな?観る人自身の経験が違いますから。だから、本作観た他の人とあーでもない、こーでもないと話ができたら楽しいのかもしれません。

感じる「建前」と「本音」感。
観終わった後に頭の中で冒頭からのシーンが脳内リピートしてました。あれってどういうつもりだったんだろ?って。

こんな心情、人間関係の描き方あるんですね。秀作です。

バリカタ
こころさんのコメント
2021年6月30日

バリカタさん
ホン・サンス、渋谷ユーロスペースで上映されているんですね🎥
上映時刻がもう少し早ければ、行きたいところなんですが。。🥲
女性達の自然な描写に、とても魅力を感じました。ヨンジ先生、独特な雰囲気と透明感のある女優さんですね。

こころ
こころさんのコメント
2021年6月29日

バリカタさん
コメントへの返信有難うございます。
同感です。
ガミにとって、夫の「何があっても一緒に居るべき」との言葉を言い聞かせなから過ごした5年間だったのでしょうね。
この旅で自分らしさを取り戻せたのかも知れません。
キム・ミニの纏った柔らかな空気感がとても魅力的な作品でした。

こころ
こころさんのコメント
2021年6月26日

バリカタさん
「見る人によってガミの人物像が変わる」…そうかも知れませんね🤔
ガミ、自分を余り出さない(自己主張しない)タイプの女性に見えました。

こころ