劇場公開日 2021年2月5日

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「マラドーナとは一体、何者だったのか。」ディエゴ・マラドーナ 二つの顔 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0マラドーナとは一体、何者だったのか。

2021年2月25日
PCから投稿

フットボールについて無知な自分は、マラドーナに関しても、メディアが報じてきた少々エキセントリックな言動だけが知識の全てだった。そんな私が言うのもあれだか、このドキュメンタリーは何もフットボールの専門的な知識を必要とする作品ではない。かと言って、私のような素人に彼の偉大さをゼロから啓蒙するものでもない。作り手が注目するのは、マラドーナがナポリに移籍してからの数年間。前人未到の快挙、W杯で生じた摩擦、さらにはマフィアとの親交や薬物依存など、熱狂と喧騒に身を晒しながら疾走した期間を、臨場感あふれる記録映像や証言と共に紡ぎ出す。そこを貫くのは「人間ディエゴ・マラドーナ」を真摯に見つめる視点だ。光と影、栄光と挫折のイリュージョンを取り払うことで、そこには笑顔の愛らしい一人の「人間」の姿が浮かび上がってくる。映画が終わる時、彼の人生をもう一度じっくり紐解いてみたい気持ちが初めて、純粋に込み上げてきた。

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牛津厚信