劇場公開日 2020年6月5日

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「不穏で、いい意味で人を不安にさせる」ルース・エドガー 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0不穏で、いい意味で人を不安にさせる

2020年7月31日
PCから投稿

学校で一番の優等生は、実は恐るべき存在ではないか? そんな疑念が雪だるま式に膨れ上がるミステリーだが、ミステリーを解き明かすことが重要な作品ではない。むしろ疑念は大きなるばかりで、すべては見た目とは違うという普遍的な真実と、それによって右往左往する大人たちの姿があぶり出されていく。タイトルロールの優等生ルース・エドガーについても、一体どんな人物なのかを明確に提示してくれたりはしない。少なくとも、劇中の親たちが思うような子供でもないし、先生が抱いた疑いも的中していたとはいい難い。ただ、押し付けられたイメージに抗う子供の底知れない複雑さに、観客として狼狽えるしかないのである。もちろんこの映画の背景には人種や差別の問題が横たわっているが、われわれが、普段いかに物を本質を見ることなく、都合のいいものを拾い集めて生きているかを突きつけられて、いい意味で不安になる映画だと思う。不安になれてよかった。

村山章