「ドキュメンタリーとかどうでもよくなる過酷で圧巻な美」ハニーランド 永遠の谷 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリーとかどうでもよくなる過酷で圧巻な美
切り立った断崖で、天然の蜂の巣に手を伸ばす冒頭の映像で、時代を超越したとてつもない映像を観ていると自覚させられる。自然と共生する女性のドキュメンタリー、と紹介するのは容易いが、彼女の人生は綺麗事にできるようなものではない。当人が嘆き悲しんでいるわけではないが、逞しさと諦念は背中合わせで、刻みつけられた孤独を羨ましいと言い切れる人は稀ではないか。
そして彼女の新たな隣人となる一家は、明らかに彼女の生活や価値観を脅かす外界からの侵入者として機能している。機能している、という意味では、この家族の役者っぷりがみごとで、ドキュメンタリーなのか劇映画なのか限りなく曖昧にしているが、そもそもドキュメンタリーは作り手の視点から描かれるものなので、むしろ劇映画であっても映画のインパクトが減るわけではまったくない。
どこかにある秘境の、自然と人間の切実な営みに悄然とする。それだけでも料金以上の価値がある。
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