「北マケドニアの養蜂家が我々に教えてくれること」ハニーランド 永遠の谷 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
北マケドニアの養蜂家が我々に教えてくれること
北マケドニアの荒廃した土地で、養蜂家という職業が成り立っていることに、まず、驚く。さらに、ヨーロッパ最後の自然養蜂家として知られる女性の慎ましい生活に衝撃を受ける。年老いた母親と2人で暮らす家の質素さもさることなから、採った蜜の半分は自分に、残り半分は蜂に返すという、自然の摂理に則った価値観に、思わず心を打たれるのだ。彼女の周辺に現れては消えていく人々との交流と、そこから見えてくる醜く、移ろいやすい社会と比較すると、多くの人々が忘れ去った自然に根ざした生き方の尊さを思い知らされる。何よりも、この凝縮されたエピソードの一つ一つが、3年の歳月と、400時間以上の撮影から拾い集められたものであることに感銘を受ける。改めて、優れたドキュメンタリー映画とは、かくも膨大な労力を費やし、その果てに達成されるものなのだ。
コメントする