「人それぞれ」佐々木、イン、マイマイン みっみごさんの映画レビュー(感想・評価)
人それぞれ
尊敬する映画監督が、公開当初「最近観た映画の中で1番良かった」と言っていたのを聞いてからずーっと観たかった。ちょうどリバイバル上映を鑑賞できてかなり期待して行った。
そうか……あの監督はストーリーより印象的な画を作り上げることに重きを置く監督だった……と気づく。
つまり私にはちょっと、だいぶ、響かなかった。
でも響いてやられて立ち上がれなくなる人がいるのも分かる。実際私の隣に座っていた女性はボロボロ泣いていたように思う。
それに関して最近立てている仮説がある。大きな声で叫んでいる人が出ていれば、よっぽどストーリーが破綻していない限り泣く人はいるんじゃないかと。大きな声は感情を動かす力がある。うん。だから泣いてる人がいたからっていい作品とは言えないんじゃないか。
しかもかなり熱量がある。熱い思いを持った男達が集まって熱い思いで脚本書いて熱い思いで撮ったんだろうな。そりゃ泣くわ。
こんなシーンを撮りたい!!!こんな人を出したい!!!それが先行してどんどん突っ走ってもう背中も見えなくなっちゃったもんだから、そんなわけあるかい、と細かい?細かくない?ところがおざなり、ツッコミだらけ。
まず佐々木という人物が親友3人、父親との関係性からしか見えてこない。その他のクラスメイトが全員キャラが死んでるから、そいつらからはどう思われてるの?そもそも佐々木コールって何をきっかけに始まるの?コールされたらどこでも全裸になって踊るやつとつるんでる3人はどう思われてるの?何回も何回もやっているようなのになぜ問題になってないの???と疑問だらけ。
親友3人は佐々木のこと大好きだけどクラスメイトからはただからかわれているのか、それともクラスメイトも全員佐々木のことが大好きなのか、それだけでも佐々木の人物像というのは大きく変わる。
そして女キャラクターが全員都合のいい女になってる。男性監督にありがちな現象。昭和ならまだしも令和ですけど。
カラオケのシーン、アフロの眼帯つけた男が急に入ってきたらあんなにこやかに迎えるはずない。河合優実がなんかいい感じなシーンにしてくれてたけど実際いたらホラーすぎ。一気に冷めた。
さらにただの友達なのに喪主やるって……なぜ?親戚いるんでしょ?河合優実に遺影を持たせたいからそうしたの?それとも監督は喪主って挙手したらできると思ったの?謎。
彼女がもう絶対別れようと思ってる彼氏のために車運転してあげるのも謎。しかも前日あんなことしちゃって反省してるのに同じ温泉旅館に泊まるのも謎。
「今日はどんな世界だった?」って聞くのも、オシャレなセリフ言わせちゃろって作為が見えて、強い言葉になるが気持ち悪い。別れ話してる時に頭撫でながら「今日はどんな世界だった?」って聞く男にきゃーっとなるのはごく少数では。
癌ってあんな風に死ねるの?若いならいけるの??見た瞬間死んでるって分かったのにただ寝てるだけみたいなの?警察、救急も呼ぼうと思ったんだけど…ってセリフは観客に対する言い訳。
抱いたことのない赤ん坊が激しく泣き始めたのに抱きしめ続けるのもそんな人いる?慌てて父親とかに返してそこから見つめるではダメだったの??赤ん坊がクズってるのが漏れ聞こえてるのにぼーっとご飯食べ続ける母親は演技力不足か。
落ちていく親友に何をしてあげればいいかわからなかったって今でも思い悩むのになぜ自分から連絡とったりはしてなかったの?卒業後の様子が見えてこない。とにかく映画の中で描かれていることしかわからない。広がりがない。こういう人もいるよなあと思わせてくれない。
佐々木って男は実際には出さない、桐島部活辞めるってよ方式で行くのかと思ったらあっさり出てきちゃったのも拍子抜け。
こういう感想書くと、私って浅い表面的なことしか観れてないのかなと自己嫌悪に陥る。でも素晴らしい映画は素晴らしいしね。
色々書きましたがこの映画に救われる人は確かにいる。とにかく細かいことはどうでもいいからエネルギーを浴びてえ!って人にはおすすめ。
