「佐々木はかわいそう」佐々木、イン、マイマイン スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)
佐々木はかわいそう
in my mindという意味を考えると「佐々木について、私が思うこと」というのが訳語になるのかな?
高校の男4人の仲間、佐々木、多田、木村、ユウジ。20代も後半、ユウジは役者を目指すも、鳴かず飛ばずで、別れた女とダラダラ同棲を続ける。多田と偶然出会うことで、高校時代に強烈な印象残した佐々木を思い出す。
佐々木は「佐々木コール」で全裸になり踊り出す、お調子者。昔、クラスに必ず一人はいた「男には絶大な人気があるが女の子には嫌われる」タイプ。リアル死ね死ね団ですね〜。
筋立ては「役者や元カノに未練タラタラでモラトリアムに生きるユウジの青春の終わり」ですね。多田はしがないセールスマン、木村は一児のパパとなり、大人の世界へ踏み出している一方、まだ定まり切らないユウジ。ユウジの心の友であり、モラトリアムの象徴である佐々木を思い出し、佐々木が死ぬことで、前に進む
改めて考えると、佐々木ってのが救いがない。高校時代に仲が良かった父親を亡くし、卒業後はパチプロ。せっかく、気の置けない友達ができたと思えば、ガンで死んでしまう。全くの道化として、死んでしまう訳です。そんな佐々木を「面白いんだけど、ちょっとヤバイ奴」と変に常識ぶって卒業後は疎遠となっていた訳ですね。
佐々木の葬式の前夜、ユウジはそれを後悔して、口にしようとすると、多田から「誰も悪くないんだ」と遮られる。ラストシーンでの「佐々木コール」は、そんな道化としての佐々木、救いのない人生だった佐々木を受け入れて、その死を祝福しよう、って、ちょっと残酷だが、グッとくる。ユウジが役者への道に向き合おうとする姿勢は、佐々木への贖罪な訳ですね。
演者は良かったですよ。ユウジ役の藤原季節は最近、主演クラスが増えてきましたし、来年が楽しみです。ユウジの同棲相手役の萩原みのりは「37セカンズ」以来ですが、この子は美形過ぎるんで、とんがった役かヒロイン級でないと目立ちすぎ。
クラスのマドンナ役の小西桜子は、私の中で今年の新人女優賞ですね。ファンシー、初恋、映像研と大活躍でした。この子は、どんな役でも出来るので、この先が楽しみです。