「【いつも心に佐々木を】」佐々木、イン、マイマイン ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【いつも心に佐々木を】
佐々木は、本当は泣きたかったんじゃないのだろうか。
でも、佐々木は泣かなかった。
泣けなかったのではない。
泣かなかったのだ。
それは、仲間の悲しむ顔を見たくなかったからじゃないのか。
悠二に「好きなことをやれよ」と言った時に流した唯一ひとすじの涙は、好きなことをやれない悔しさからだったのではないのだろうか。
だが、佐々木はその後、日々を無為に過ごしていたわけではない。
ほかにも仲間を作り、
告白して、彼女らしき苗村もいて、
ルールを理解しないバカにはルールを説いて、殴り殴られて、
ゴミ屋敷のような家の中には元美術部らしく絵がたくさん描かれてあって、
バッセンのホームラン王にもなっていた。
最初はカスリもしなかったのにだ。
佐々木は、きっと、自分自身の病気のことを悟り、悠二に連絡して来たのだ。
励ますために、大切な友人の背中を押すために連絡して来たのだ。
卒業して一緒に過ごすことがなくなっても、佐々木はみんなと一緒にいたのかもしれない。
皆んなは佐々木を感じつつも、悠二は、佐々木を少し見失っていたのかもしれない。
だから、佐々木は連絡してきたのだ。
佐々木の人生は強がりばかりだ。
だが、きっと、佐々木は、そうやって仲間といることが一番の楽しみだったのだ。
皆んなは泣いた。
思いっきり悲しんだ。
でも、悠二も多田も木村も、佐々木はそれを望んでいないことに気がついたのだ。
だから、裸の佐々木が霊柩車から飛び出してきたのだ。
佐々木コールだ。
人生は辛いことばかりだ。
だから、佐々木が心の中に居てくれたらいいような気がする。
悠二が一歩踏み出せたように、僕達も踏み出せるかもしれないからだ。
なんか、笑っては泣ける、素敵な作品だった。
観るべし。
佐々木が心に住みついてくれるかもしれない。