「泣きたいけど笑顔の仮面をつける」泣きたい私は猫をかぶる 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
泣きたいけど笑顔の仮面をつける
生きる上での仮面の話だ。複雑な家庭環境の中学生女子の主人公が、猫に変身できるお面を手に入れ、好きな男子に近づく。人の顔を隠すお面が重要な小道具として登場する通り、これは「仮面=ペルソナ」についての話だ。
「猫をかぶる」とは、本性を隠して良い子ぶるというような意味だが、主人公は父の再婚予定の相手と一緒に暮らし、常に笑顔(の仮面)を絶やさない。そして、猫のお面をつけて、猫に変身して好きな男子のところに行く時だけは、本心から甘えることができる。人間でいるときのほうが本性を隠す仮面をつけていて、猫になっているときのほうが本心で生きていられるという逆転状況。本当は「泣きたい」のに笑っていないといけない、だから「猫をかぶって」本音で生きる。岡田麿里の作品らしい捻じれ方をしている。
Netflixでの配信となったが、本来は映画館で中高生に見てほしい作品だ。本音で生きることの難しさと大切さをリアルに描いた秀逸な青春映画だ。
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