劇場公開日 2020年10月16日

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「中国社会派エンターテイメント」薬の神じゃない! バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0中国社会派エンターテイメント

2025年7月4日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

知的

陸勇という白血病患者がインドから安価なジェネリック薬を密輸し、他の患者たちにも配った「陸勇事件」という実話がモデルらしいが、いろいろと話を作り替えてコミカルな風味も加え、見事なエンターテイメント映画に仕立てている。笑って泣ける映画で特に終盤のシーンは感動した。本国で大ヒットし日本でも評価が高いのもうなずける。

その一方で、高価すぎて多くの患者が治療薬に手が出せないという中国の社会問題にも鋭く切り込んでいるのが偉い。中国じゃそういう社会批判を描くのにリスクもあっただろうが、ぎりぎりまで攻めていたと思う。しかもこの映画と元ネタの事件そのものが現実にも影響を与え、中国の医療改革が進んだというからすごい。白血病患者は感染症を非常に恐れるため全員がマスクをしているという描写も、コロナ禍だった日本公開当時にはやたらタイムリーな映画になっていて、なんだかシンクロニシティ(共時性。意味のある偶然の一致)を感じさせた。

俳優陣も皆好演だが、特に主演兼製作のシュー・ジェンはムロツヨシそっくり。顔だけでなく声や演技も似てる。他の俳優も1人1人キャラが立っていて皆良かったし、悪役に見えた登場人物も一片の良心を見せてくれるところも良かった。

面白かったのに劇場公開時に観た時の映画館の客は僕1人だけ。ちょうど首都圏で再度の緊急事態宣言が出た頃で、僕の住む地方でも年寄りや主婦が出控えていたのかもしれない。

バラージ
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