劇場公開日 2020年10月16日

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「今週(23日~)では隠れた名作。お勧めです。+予習必要かも。」薬の神じゃない! yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0今週(23日~)では隠れた名作。お勧めです。+予習必要かも。

2020年10月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ※ 映画の特質上(中国が舞台)、一応、政府批判などは意図的に避けているようですが(それでも政府がOKだしたので、「いい意味で悪い点は直していきたい」ということなのでしょう。いずれにせよ、エンターテイメントと政治思想は別である点は断っておきます)

今年41本目。
タイトルからするとコメディ映画という気がしますが、そうではなくシリアスな映画です。
ストーリーについては多くの方が触れているので省略し、「背景の背景」について触れたいと思います。

(ややネタバレ)
何とか何とか
何とか何とか
何とか何とか
何とか何とか
何とか何とか

(あと5行)
本日はいい天気ですねぇ。
本日はいい天気ですねぇ。
本日はいい天気ですねぇ。
本日はいい天気ですねぇ。
本日はいい天気ですねぇ。
本日はいい天気ですねぇ。

多くの方が書かれている通り、実際にあった事件を(政府批判の問題を抱えるため)微妙に時代をずらしています。
ここで問題になるのは、実は「ジェネリックって何?」っていう問題です。中国から見れば、韓国や日本、モンゴルなど近隣諸国からでも良いのに、なぜインドなの?というお話。実はここには、インド特有のジェネリックの事情が絡んでいます。

日本をはじめ多くの国ではジェネリックといえば先発品が出た後、数年たって後発品が出ます。このとき、薬価はすでに先発品のデータを使っているので安価で済みます。逆に日本をはじめとした多くの国では「先発品のデータがある」ために、ジェネリックといえども一定の担保はあり、政府が進めているようにジェネリックに、といっているわけです。

ところが、医薬品は主に成分やその配合具合がメインになりますが、インドでは「物質特許」を認めてこなかったことが一つの背景にあります。あまりにもひどいので最近は少し改正されましたが、それでも抜け道は多いのです。つまり、「物質特許」がないため、合成方法などを(形式的に)変えれば「製法特許」は回避できるのです。そして、そのような事情でインドでは大量に、日本でいう「ジェネリック」とは違う「定義の違うジェネリック」が大量にできてしまったのです。

 ※ なお、各製薬業界の批判を受けて、インドもルールを多少変えたりしていますが、本質は変わっておらず、いわゆる「エッセンシャルドラッグ」(=一般的によく使う定番薬)は、もうインド頼みになっている実情があります(対アフリカなどで)。

作中でも、明らかに「普通のジェネリック」と考えれば生産性が取れないものを向こうから交渉しているように、「作りたい放題」と化しているわけです(日本だと、ジェネリックでも先発品の4~5割はしますね)。ここは、こういう問題があるのです。

当然、製薬業界の各企業もこのことは問題視はしています。しかし、今(2020)はCOVIDの問題、そして、インドのこのゆがんだ「ジェネリックの制度」は、インドがそうした「ゆがんだジェネリック医薬品」を、貧しいアフリカ諸国などに輸出しているという事情もあるため(=それで助かっている命もあるため)、あまり「うるさいことは言えない」のが実情だったりします。もちろん、明らかに「安全性が担保できない支離滅裂な科学水準の国の制度」なら、「いい加減にしろ」になるわけですが、発展目覚ましいインドではそういうことは少なく、事実上、「取り締まることは可能だが、そうすると困る人がもっと出てくる」ので、事実上野放しにされているのです。

 この映画は実はそういう背景が隠れていて(だから、明らかに原価割れしているような値段でやり取りしていたりする)、その点を知らないと、つまり、換言すると「日本のジェネリック制度」など、「一般的なジェネリック医薬品のルール」だけだと、この映画はその本質がわかりづらく、そこがポイントでしょうか。

 採点は下記0.2を切り上げて5.0までにしています。お勧めです。

 0.2 … 上記で触れたような点、つまり、中国にも「純粋なジェネリック医薬品」はあるのですが、ここにインドが絡むと、インド特有の制度が絡むために「ジェネリック医薬品」の定義が曖昧になり、上記のような事情を知らないと何がなんだかわからず、混乱を招くかなと思えた点です(ただ、こういう部分はかなりマニアだし、ちゃんと調べれば出てくるけど、そうそう初見ではわからない)。
この点の説明が薄いので、ちょっと見ている人が「日本基準のジェネリック制度」を念頭に見ると「なんでインドなの?」ということになります(科学水準としても、日中関係は別にしてもルールや製法水準が確立している日本と取引したほうが長い目で見ると得なのは明らか)。

 とはいえ、今週(鬼滅の刃はいつまでやるんでしょう…)の作品の中では隠れた名作と思います。
惜しくは放映されている映画館がすくないという点でしょう(それは映画の責任ではないので減点要素に入れていません)。

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yukispica