「ワイルド・スピード 超人伝説」ワイルド・スピード ジェットブレイク マガランさんの映画レビュー(感想・評価)
ワイルド・スピード 超人伝説
※ガッツリ、ネタバレてます。
※キン肉マンの知識については浅いため、何卒ご容赦ください。
この「ワイルド・スピード」も9作品目、1作目はちょうど20年前、
もはや立派にサーガと呼べる映画シリーズになっている。
今作の敵役である金持ちのボンボン、オットー(演:トゥエ・アーステッド・ラスムッセン)が
しきりにスターウォーズの話を持ち出してくるのは、
彼の性格(基本的にルークやハン・ソロ、Xウィング、ミレニアムファルコンなど正義の側だけ
を持ち出してくるので、自分が絶対的に正しく支持されるべきである)を表すのと同時に、
「ワイルド・スピード」シリーズ自体もメタ視点で表しているのかなとも思った。
それについてはサイファー(演:シャーリーズ・セロン)の返し
「あなたは(ルークでもハン・ソロでもなく)ヨーダ」が、
オットーの世界の文脈に乗っているように見せかけておきながら
その理由として「人形(パペット)だから」という、常にメタの引いた目線でしか物事を
捉えていないという彼よりも上手になるものとなっていて、ここでオットーの心を
完全に掌握しちゃったんだなと思わせるやり取りは巧みだった。
と同時にファミリーのコメディ担当であるローマン(演:タイリース・ギブソン)が
序盤のモンテキントでの回収物争奪戦を経た後に語る
「俺たちは運が良すぎるのでは…それだけでは語り切れない…
無敵なんじゃないのか(意訳)」
みたいなのもメタ的な意味を匂わせつつ、一旦はギャグとして落としていたし、
後にはテズ(演:クリス・“リュダクリス”・ブリッジス)と宇宙に行った際に
衛星を体当たりで破壊するしかないとなって見事体当たりしながらも生還するところで
伏線回収っぽく収まるあたりもフォーマットが盤石なのかなと。
ハン(演:サン・カン)の生還についてもミスター・ノーバディ(演:カート・ラッセル)が
裏で糸を引いており、今作のきっかけも彼の任務なので、彼の生死は不明だけど
生きているんだろうな、またあと2作品で関わってくることは容易に想像できる。
シリーズがもうある種のフォーマットができていて、
そこをどのように活かし、崩して変化して見せるかになっている。
「キン肉マン」とか「ドラゴンボール」みたいなバトルもののコミック的要素を感じるし、
現実にマーベルのMCUとか、DCシリーズがヒットしている中で
同じような現象に当たるのかなとも感じる。
1作目がストリートレースとギャング犯罪ものであり、
2作目の「X2」、3作目「X3」は続編でありながら
主人公は変えたり、登場人物の岐路となる事件が起きたり
物語を拡張させる要素を持っていた。
4作目の「MAX」では車やドライビングテクニックを用いて
犯罪者集団と戦う原型をつくり、
5作目の「MEGA MAX」でファミリーの繋がりと自由を求めて戦う意志を築いた。
6作目の「EURO MISSION」で敵役が味方になる又は共闘する流れができ、
7作目の「SKY MISSION」ではファミリーの拡張(事件にかかわった者が加わる)、
8作目の「ICE BRAKE」でファミリーの見つめ直しと捉え方の再確認が行われた。
今作ではドミニク(演:ヴィン・ディーゼル)の過去を描き、
彼の家族観、父への憧れと囚われている部分、
弟のジェイコブ(演:ジョン・シナ)との確執と誤認していた真実に向き合って
改めて自分のファミリー観を強固にしていくんだろうなと思った。
トレット家とデッカード(演:ジェイソン・ステイサム)たちショウ一家の
家族構成ほとんど同じじゃんとか(兄妹が、男、男、女)、
今後スピンオフ含めてどれだけ関わるのかは気になるところ。
サイファーはしっかり生きていたから今後最強の敵と組んでまた現れるだろうし、
あと2作とするとラスボス確定なのか、さらなる敵が出てくるのか。
まるでMCU作品の終わりみたいにミッドクレジットで出てきたデッカードの
元を訪ねるハンで終わったのも次作への期待を持たせるところは十分だったと思う。
いい意味でのツッコミどころも多々あって(笑)、
もう車のクラッシュシーンのバリエーションやりつくしてないか問題、
宇宙行ったら次どうするんだ問題、
レティ(演:ミシェル・ロドリゲス)とミア(演:ジョーダナ・ブリュースター)が
日本に行った時の日本の描写(シーンとしては少なく見た感じ気になるところは
少なったものの、ミアが箸がうまく使えずラーメンをすすらない=ちゃんと食べられて
いないで具だけかじっていたのだけは気になったかな)、
強力な磁石の効果(磁力で引き寄せることは可能だが、反発もできるのか)、
最後のトレーラーに乗っていたオットーの部下たちがその後のクラッシュの際には
誰一人いなかった、等々。
これだけやりたい放題やっていながら、ファミリーは無限に拡張できるという
ある種先進的かつポジティブなメッセージもあるから、受け入れられるのかもしれない。
男が家を守るという旧態依然とした向きも見えるが、一方では女性もどんどん前に出て
戦いに参加している上に、新キャラのエル(演:アンナ・サワイ)もがっつり戦えるし。
日本的に言うとドラテクを持つマイルドヤンキーたちが世界を救いながら、
ファミリーを築く話だと思う。
あとはブライアン(演:ポール・ウォーカー)は出てこないけどあくまで確かに”いる”設定で
最後まで通す演出は憎いなぁと思う。これは作品の外側でのファミリーの繋がり故なのかも。
そう考えるとホブス(演:ドウェイン・ジョンソン)がスピンオフだけでなく、
本筋にちらっとでも出てきてほしいなとも思うがなかなか難しいのだろう。
ジェイコブが助っ人として来たら、今後誰を敵役にすればいいのか悩みどころだろう。
人間を越えた筋肉超人ばかり揃ってきていて、人によっては頭もキレる、
ドラテクは持っているとくると悩ましいんだろう。
どう収めるのかも含めてシンエヴァ並みに気になるシリーズだなぁ。