「アクション映画としての体を成していない」ワイルド・スピード ジェットブレイク 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
アクション映画としての体を成していない
極めて退屈な作品である。中だるみがひどくて、何度も寝そうになった。主役を張っているヴィン・ディーゼルが表情に乏しく人間的な魅力がない上に、相手役のレティを演じたミシェル・ロドリゲスの表情も同じように無表情で気持ちが悪い。
ハリウッドのB級作品らしく家族第一主義で予定調和だ。主人公たちが死なないことがわかっているから、緊迫感もないしドキドキもハラハラもない。映画の中のシーンでは、登場人物が俺たちは死ななないし大怪我もしないと、本作品が予定調和であることをみずからネタバラシをしていたのはギャグのつもりだろうか。
ファミリーという単語が何度登場したことか。家族が大事で仲間が大事。銃が登場するからには誰かが死ぬか大怪我をしなくては済まない筈だが、死ぬのは雑魚キャラばかりで、仲間は銃弾の雨の中を走って傷ひとつ負わない。
凶悪な敵を捕まえても痛めつけもせずに放置する。だからチャンスを捉えて逃げ出したその男に再び甚大な被害を与えられてしまう。任務として殺すのがNGなら、それ以上活動ができないように膝や両手を銃で撃ち抜く。止血しておけば死ぬことはない。傷が治っても一生自分の脚では歩けないから、悪行も減るだろう。
思うに、アクション映画に家族の確執の物語はそぐわない。感情はドライに、格闘は泥臭くリアルに表現し、主人公が窮地に陥ることがアクション映画の必須条件だ。本作品は家族の物語を絡めようと無理したために、アクション映画としての体を成さなくなってしまった。シリーズの中でも最も残念な作品と言わざるを得ない。