「妄想と現実のはざまに迷い込む感覚を映画に落とし込む。」ホース・ガール 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
妄想と現実のはざまに迷い込む感覚を映画に落とし込む。
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俳優のアリソン・ブリーが共同脚本と主演を務めたサイコスリラーであり、ある種のSFであり、どこかしらコメディの香りもまとっている。ブリー扮する主人公は、祖母や母と宇宙人の関連を疑い、自分も宇宙人にアブダクトされたのではないかと疑いはじめる。常識的にはなにか精神の均衡を崩しているのだろうし、シャマラン映画だったら「本当に宇宙人にアブダクトされてましたよ!」となるところだが、本作のそのどちらでもない方向へと舵を切る。妄想なのか現実なのかが曖昧なまま、しれっと話だけが進んでいくのである。作中にちりばめられたヒントを追っていると、なんとなく筋道立ったものが見えてくる。緻密に構築されていることもわかってくるが、それでいてどこか投げっぱなしのようにも感じられて得体が知れない。
ブリーの発言によると、自分の家族が統合失調症を患ったことから、自分もそうなるのではないかという恐怖をずっと感じていたという。この映画もまた、その恐怖を描いたホラーとして機能していて、なおかつ統合失調症側の主観がメインになっているので、現実と非現実のバランスが終始おかしい。自分にはない視点で世界を見ることができる、というのは映画が得意とする得難い体感であり、一体何の映画だったのかと心のどこかに引っかかって、ときおり観なおしたくなる。
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