「未完成なのだろうなコレは。」キネマの神様 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
未完成なのだろうなコレは。
楽しみだったんだけどずっと見れなかった。
志村さんの印象が強すぎて。
様々な不運に見舞われた作品だと思う。
コロナの描写には脚本上の変更等も伺える。
物語はノスタルジックで、ワビサビのような赴きがあり、現代への訴求力は少ないように思う。
70歳になって観ると傑作なのかもしれない。
ただ…昔は余白があったんだなぁと感じる。
数字だけではなく、そこに人の情念が介入出来る余白が。
後半に入り、ホロリとするエピソードが増えてくる。娘が代弁するスピーチなんかはグッとくる。
北川さんの美貌はズバ抜けてるし、永野さんはとてもいじらしく可愛い。ああ、コレらが監督の世界なんだなぁと思える。どこか安心感を感じてしまう。
…
ここからは烏滸がましいが悔しさを綴る。
無念だったと思う。
沢田さんに非はない。
でも、志村けんさんの姿が過ぎる。
剛直が志村さんのまま上映できていたのなら、きっとこの評価では収まらないような気がしてる。
志村さんの人生を反映させた役になっていたはずだし、だからこそのキャスティングでもあったはずだ。
おどけた台詞も、強気な仕草も、年甲斐もなく奮闘する姿や、どこか愛嬌があり許せてしまう。志村さんがこの仕事を受けた時、監督が感じた手応えはどれほどのものであったろうかと想像する。
カメラの前で、それこそキネマの神様がどんな奇跡を巻き起こすのか期待に胸が膨らんだんじゃないだろうか?
山田洋次x志村けんは相性が良すぎるような気がしてて、とんでもないギフトを魅せてもらえるんじゃないかと思ってた。
やっぱりまだ観るべきではなかった。
昇華しきれない無念さに引っ張られたままで、作品に相対せなかったように思う。
共演者もスタッフも普段感じる事がないような相当な苦労があったのだろうと思う。
監督を生業とするならば苦渋にも満ちた作品だろうとも感じる。
今更ながら、故人のご冥福をお祈りします。