「辛い記憶の残る100周年映画」キネマの神様 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
辛い記憶の残る100周年映画
志村ケンさんの訃報でとん挫した映画と言うことで話題になりましたね、喜劇の巨匠山田監督が志村さん主役で渥美さんと違ったどんな味を引き出すのかと興味津々だったのでがっかり、同じ事務所の縁でジュリーが代役というのもびっくり、全然イメージが違うじゃないですか。
折角のジュリーなのに劇中で唄うのが東村山音頭ですからジュリーにはまったくお気の毒。
ケンさんへの追悼の想いが勝ったのでしょう、ジュリーも所々ケンさんを真似たようなとぼけたリアクションをしていましたね。
ただ、あまりにも自己中のダメ老人なので誰がやっても引いてしまうと思いますがジュリーはキレ方がリアルなので怖いです。モデルは原作者原田マハさんの実父とのこと、ギャンブル好きで借金まみれ、どうしようもない人だが情に熱く憎めない人柄だったとか、難しい役どころ、監督がケンさんを選んだわけが察しられました。
松竹100周年ということで往時の花形、清水宏監督(劇中では出水宏)や小津監督(小田)、原節子(北川恵子)さんをもじっていますね、清水監督は嘘っぽい演技を嫌う人で実際に「役者なんかものをいう小道具」という暴言を残しています、リリーフランキーさん怪演でした。
劇中でゴウが書くシナリオで二枚目俳優がスクリーンからとび出てくるアイデアはバスターキートンの喜劇からインスパイアと言っていましたが、ウッディアレンの「カイロの紫のバラ(1985)」のまんまですね。木戸賞100万円としていましたが実際の城戸賞の副賞は50万円です。
映画通ならすぐわかりそうなつっこみどころを入れるのも「キネマの天地(1986)」同様の山田監督らしいくすぐりに思えます。
コロナのパンデミックで映画界も苦境に立たされている現状も織り込んで奇しくも辛い記憶の残る100周年映画になってしまいましたね。