「キネマの神様からの贈り物」キネマの神様 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
キネマの神様からの贈り物
全編、映画愛に包み込まれた心温まる気持ちになる作品である。観客に夢を与えてくれる作品である。夢のある作品である。前半は、山田洋次監督お得意のリアルな主人公家族の物語であり、リアルな割に殺伐感はなく、温かさが画面から伝わってきたのは流石。ようやく後半になって、題名通りの主人公がキネマの神様から贈り物を授けられたような、夢のある展開になり胸が熱くなった。
今作の主人公は、ギャンブル依存症の78歳の老人・ゴウ(沢田研二)。彼は度重なる借金で家族を困らせていた。彼は、青春時代、今も親交のあるミニシアターの館主・テラシン(小林稔侍)とともに映画撮影所で働き、名女優、大監督に触発され映画人としての将来を夢見ていた。夢叶わずにいたゴウの人生だったが、あるきっかけで、埋もれていた彼の才能が一気に開花するチャンスが訪れる・・・。
主人公の青春時代の華やかで活気に満ちた撮影所の雰囲気、女優・桂園子役の北川景子の美しさが、当時の映画隆盛を彷彿とさせる。全編を俯瞰した映画作り、役者の所作の一つ一つに妥協しない映画作りなど、対象的な映画作りをする監督たちの対比が面白い。当時は癖のある監督が多かったようだ。個性的な映画作りが個性的な作品を生み面白い作品に繋がっていくと推察する。
沢田研二の名演とともに光っていたのが、菅田将暉と永野芽郁である。青春時代の主人公は、映画監督を目指し独創的アイデア考え出していくが、当時の撮影現場スタッフには理解できない。次第に苛立ち苦悩する主人公の姿を菅田将暉が全身を使って激演している。また、食堂の看板娘・淑子役の永野芽郁の、明るく元気で眩しい佇まいが、魅力に溢れている。ストレートな台詞回し、瑞々しいナチュラルな演技がGood。
ラストシーンは、ファンタジーであり主人公の願いをキネマの神様が叶えてくれたと解釈する。ラストシーンに山田洋次監督の映画愛が凝縮されている。感動的だった。