「高齢化社会の縮図みたいな映画」キネマの神様 Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
高齢化社会の縮図みたいな映画
松竹映画
19世紀に創業し1920年から映画製作も取り組み
日本映画を創生期から支えてきた会社
今作のメガホンを取った山田洋次監督と主演の渥美清で
作り上げた人気シリーズ「男はつらいよ」は
そんな松竹の屋台骨を支えました
そんな松竹の100周年記念作品にあたる今作
当初は滅多に俳優業をする事のなかった
志村けん主演ということで話題になりましたが
それは叶わず志村けんと親交のあった沢田研二
が主演を任されました
原作小説は未見です
で感想ですが
恐らく山田洋次監督の思い出の中にある
ノスタルジーあふれる(たぶん)松竹の大船撮影所の
雰囲気はすばらしく惹きこまれますが
監督の持ち味である人物の描写や繋がりの
部分がちょっと…深みを感じられず
色々勿体なくなってる印象を受けました
前述の通り原作は未見ですが
相当改変を受けているようです
また近年の映画ではまだ少ない
コロナ社会を取り込んでいますがそれも
取って付けただけのように感じます
主人公の円山ゴウは飲んだくれでギャンブル好き
借金まみれで家族にも逆ギレという
クズっぷりで家族は映画以外の趣味を取り上げます
ここまで原作とほぼ同じようですが
ゴウが元松竹映画の助監督でそこで妻淑子とも知り合った
というような改変にされています
その撮影所時代から映写技師として知り合いだった
テラシンとの三角関係といった図式になります
で若ゴウはテラシンとの淑子をくっつけよう
とするのですがなぜそうしたいのかも不明
自分も好きだけど照れくさくてそうしてるのか
鈍感なのかハッキリしなさすぎて見方では
ただのサイコパスにも見えてしまいます
またゴウは「キネマの神様」と言う当時としては
かなり画期的(らしい)シナリオを書き
監督としてクランクインまでいくのですが
撮影初日に緊張でお腹を壊し現場とケンカをして
映画の仕事をやめて撮影所を去ってしまう
というアッサリした展開
テラシンをあっさり振った淑子はゴウに
ついて行ってしまうと言うどうしようもない
展開に正直そこまで移入もできません
テラシンの方がよっぽど主人公向きな気が…
で現世のクズゴウはその時のキネマの神様の台本を
読んで感動した孫と現代風に脚本賞に応募すると
大賞に選ばれて100万円を獲得
でも借金がどう解決したのかとか
(前は退職金を充てたとか言ってましたし)
細かなディティールがいい加減な映画で
現実味がどんどん無くなっていきます
これ山田洋次監督の前の寅さんの映画でも
思ったのですが監督特有の意識がすれ違って
ケンカになるような描写が現代なりの
高齢者を挟むとどうしても認知症だとか
そうした要因を意識してしまうんですよね
ゴウが映画監督を挫折してからどう映画と
向き合ってきたのかもよくわかりません
(テアトルの会員にはなっていたようですが)
あと肝心の沢田研二の演技
確かに昔はすごかった
「太陽を盗んだ男」なんて今観てもゾクゾクする
でも今作は演じ方をすっかり忘れてる感じで
山田洋次監督のディレクションをそのまんま
やってるだみたいな感じを受けました
若時代も含めゴウが魅力的に見えてこない
これを100周年記念作品でいいのかなと