「キネマの神様を確かに見た若者達が胸に抱いた夢と、映画愛の行く末を考察する作品」キネマの神様 beast69さんの映画レビュー(感想・評価)
キネマの神様を確かに見た若者達が胸に抱いた夢と、映画愛の行く末を考察する作品
あの名作『ニューシネマパラダイス』が好きな人に、オススメしたくなる作品です。
マスメディア主導の「コロナ茶番劇」によって、満員電車は何故か許されて、全国の映画館が休業や規制に見舞われた昨今、古くから続く映画の世界を見つめ直す良いキッカケにもなり得て、タイミング的にもピッタリの作品だと感じました。
主演:志村けんの代役という急遽のオファーを快く承諾した沢田研二の好演は見事で、安心して鑑賞出来る良作に仕上がっています。
個人的に映画での沢田研二と言えば昔の名作『太陽を盗んだ男』の印象が強く、かなり変わってしまったルックスには驚きましたが、演技力も声の張りも衰えを知らず、期待以上に魅了させてくれました。
主人公ゴウの若かりし頃を演じる菅田将暉も、素晴らしかったですね。
1月に『花束みたいな恋をした』と、6月に『キャラクター』を観ましたが、彼はどの役を演じても、その人物の魂が乗り移ったかのようなリアル感があり、違和感なく観れるのが実に見事です。
永野芽郁が演じる食堂の看板娘は、この世のものとは思えないほどの美しい輝きを放っています。
昭和のスター女優を演じた北川景子の美しさも見逃せません。
伝説の名女優、原節子を思い起こさせる場面が出てきて、小津監督映画ファンにはグッと来てしまうであろう演出も凄く良いですね。
主人公ゴウは、映画評論の言葉では表現不能な、神の魔法が映画に宿っている事を知っています。
映画業界が活況だった当時、そこに大きな夢を見出して映画制作に携わった人達がいたでしょう。
夢破れて業界を去った人達もいたでしょう。
この作品はそんな映画を深く愛した多くの人達へ捧げられていると感じます。
一昨年に観に行ったタランティーノ監督の名作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の事も思い出されました。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』では、落ち目になった俳優が相方のスタントマンと2人でハリウッドで生きのびる姿を描いていますが、華やかに見える映画業界の裏側で、知られざる多くの人間ドラマがある事を教えてくれます。
私はこういった映画愛に満ち溢れた作品がとても好きなので、これはもう5つ星をつけざるを得ません。
映画を愛する多くの人達に観ていただきたい名作と感じます。