「【映画人へのオマージュ】」キネマの神様 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【映画人へのオマージュ】
小津安二郎作品を超えたくて、多くの映画人が、長い間、様々な工夫や努力を重ねてきたんだろうなと思う。
そして、その時、理解されなくても、技術的な問題で脚光を浴びなくても、時代を経て、改めて日の目を見ることだってあるのだ。
この作品は、そんな物語だ。
この作品は、そんな不断の努力を重ね、いろいろな希望を繋いできた映画人へのオマージュであり、そして、コロナで亡くなられた志村けんさんへの哀悼なのだと思う。
ほとんど役者の仕事を引き受けてこなかった志村けんさんが、この役を引き受けたのは、志村けんさん自身が、先人のお笑いを超えようとずっと努力してきたから、通じるところがあったのではないのか。
そんな気がする。
沢田研二さんが、この代役を引き受けるにあたって、相当悩んだと何かで読んだ。
沢田研二さんの場合は、志村けんさんとの友情の他にも、いつもつきまとう、自身のジュリーのイメージを払拭したいという気持ちもあったのだろうと考えたりもした。
映画人も、コメディアンも、シンガーも、そして、多くの人も、何かを超えようと悩んだり、考えたり、工夫したり、努力しているのだ。
映画は、昔の場面は丁寧な言葉遣いで、現代の場面は口語長になって、この対比も、とっても、それらしくて面白い。
モノクロになったら、北川景子さんは、当時の女優さんそのものだし、逆に、昔の女優さんが、現代に蘇っても、実は今風に見えるのではないのか。
そんな風に考えながら観るのも楽しい気がする。
演出でノスタルジーに包まれる人もいると思う。
実際、コロナで一つ空いた隣の席の高齢の女性は、若い頃の恋愛を思い出してか、或いは、夫との苦労話が蘇ってか、ところどころで結構泣いてたし、トドメに志村けんさんへのメッセージが映し出されると、ズズって、鼻もすすっていた。
キネマは、神様が、あり得ないこともたくさん散りばめて、でも、ありそうな気にもさせて、想像力も刺激して、僕は、本当に楽しいものだと思う。
いつもそう思って、映画館に足を運んでいる。