「音も主役」椿の庭 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
音も主役
写真家の撮った映画ということで、たしかに映像美が追求されている。
動きによる演出効果は犠牲にされ、“画”の集積で作品が構成される。
寝室のシーンでは、2人の間のピント移動だけが行われる。
照明は抑えられ、自然光を重視している印象だ。
海、雲、雷雨などの自然描写。金魚、蜂、バッタ目などの動物。
庭の植物の変化が、季節の移り変わりを告げる。
歴史ある家の調度品は、どれを取ってもアンティーク調。電話までもが、時を忘れたかのような型式である。
人間も、“画”の一部として美しく機能する。シックな着物姿の「絹子」。「渚」の白い肌は、薄暗い家の中で映える。
それらを、計算された構図で切り取って映し出す。
しかし、“画”だけでなく、もう一つ主役があった。“音”と“音楽”である。
絶え間なく響く波の音。鳥の鳴き声。
静かな家では、ちょっとした生活音もよく響く。テレビやケータイなどが、不自然なくらい存在しない世界だ。
静かなBGMは、始めはピアノ独奏で、中盤は絹子の“心の震え”を表すかのようなチェロソナタに代わり、ピアノ独奏に戻って、ピアノ四重奏でエンディングを迎える。
また、想い出の曲として「トライ・トゥ・リメンバー」が3回流され、アクセントになっている。
台詞は乏しく、ストーリーはあって無きが如しである。
始めは「庭」がテーマだが、後半は「家」の方にテーマが移っていく。
絹子の家に対する、思いの深さだけがストーリーだ。
本作に期待外れなところがあったとすれば、監督自身が書いた、心に響いてこないキレイなだけの脚本だ。
さすがに市川崑とはいかなくても、自分は映画「細雪」のような“女の世界”を期待していた。
男の存在の“異物感”は良く出ているものの、女の“人間らしさ”が今一つ伝わってこない。ラストの落葉掃きのシーンような、情感が交差するところが少なすぎる。
日常を描く作品ならそれでも良いが、絹子も渚も、特殊な状況に置かれているのだ。
渚の状況は、結局、詳細不明なままで終わる。
本作であれば、渚役はシム・ウンギョンではなく、少女であるべきだと思う。
シム・ウンギョンの才能を無駄使いしたという印象だ。
コメントありがとうございます。エンドロールの動くのがあまりに早かったので、BGMの曲が何なのか確認できなかったのは、残念でした。二人の関係性ですが、自分も中盤以降に姉娘の事情が明らかにされるまで、さっぱり分かりませんでした。外国人である必然性はなく、シム・ウンギョンという不思議な魅力のある俳優を使いたかったために、取って付けた設定なのかなあと勝手に推測しています。
こんにちは。
昨日見てきました。音も主役…と言うのはまさしくその通りでした。私が言いたい事を全て現していて、「まったくぅ」と唸った次第です。
私は、あらすじを読まないで映画を見たので、二人の関係性、何故日本語が不自由なのかの説明がずーっとなくて途中まで分からぬままで苦しかったです、映像は綺麗なのに😩