劇場公開日 2020年3月21日

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「震災を知らない世代と歩む「復興」」春を告げる町 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0震災を知らない世代と歩む「復興」

2020年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

東日本大震災から来年で10年になる。復興は進んだのか、そもそも復興するとはどういう状態なのか、様々な宿題を抱えたまま、福島県双葉郡広野町の人々が日常を送る姿を捉えている。
本作が素晴らしいのは、すでに震災を知らない世代を描いていること。震災後に生まれた子供を抱える夫婦が広野町に戻ってきて、どのように過ごすのか、震災をどのように語り継ぐのかという問題にすでに直面しているのだ。すでに多くの日本人が戦争体験をしていない世代で占められていて、戦争をどう語り継ぐかが大きな課題となっているように、すでに3.11をどう忘れないようにするかの課題を捉えている作品なのだ。
演劇部の高校生たちは将来のその子どもたちの姿を象徴しているかもしれない。部員の1人は震災を経験していない。他の部員たちと体験にギャップがある。復興をテーマにした芝居作りは意見がぶつかり合ってなかなか進まない。
様々な課題を抱えながらも人々は笑顔を絶やさない。田んぼに新しい稲が宿るように、広野町にも新しい命が生まれる。震災を知らない世代とともに復興の道を歩む町の力強さに感動した。

杉本穂高