「味のある役者陣のやりとりが徐々に癖になる」あの頃。 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
味のある役者陣のやりとりが徐々に癖になる
この映画には何か、若き頃に未知なる扉を押し開いたときに感じた部室臭のような空気が満ちている。それは懐かしさと共に酸っぱさすらこみ上げる記憶。歳を重ねて口にする機会は減っても、それでも、当時の仲間とならいつでもあの頃に戻って盛り上がれる。思い出して笑顔になれる。ハロプロ好きでもそうでない人でも、誰もがそういう記憶、場所、仲間に思い当たるところがあることを、じわじわと気づかされる作品だ。イベントで集う仲間は、各々が格別の芸達者ばかり。はじめはとっつきにくそうに思えても、幾度も場面を重ねていくことで、徐々に味が沁み出し癖になり、しまいにはこちらの方が「馴染みのあの感じ」を求めてしまうほど。また、今泉演出は決して感傷的になりすぎず、お涙頂戴にも陥らない。だからこそ、あの苦笑してしまうくらい掛け替えのない日々が輝きだす。いつもとガラリと違う個性を放つ松坂桃李、そして波に乗る仲野大賀の魅力も堪能した。
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