劇場公開日 2021年2月19日

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「今が一番楽しい、けど……」あの頃。 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5今が一番楽しい、けど……

2021年2月20日
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《卒業》「今が一番楽しい」自分、アホちゃう?分かるわ〜おもろいわ〜。手(今泉監督)もエロビデオ(冨永脚本)も離さへん。"好き"が溢れてた!何より生きた証があった。
好きな監督とキャスト = 松坂桃李 × 仲野太賀 × 若葉竜也(今泉監督作品常連?)による本作には、一見今までの今泉監督のフィルモグラフィーから違うんだけど、やっぱり監督らしい"好き"という一途な気持ちと"くだらない"の中にある退屈を愛する瞬間がいっぱいあった。グダる"内輪ノリ"もしっかりと本作を形作る"クセ"・個性になってたみたい。今泉監督らしい役者への裁量が大きそうな演出と、その場の自然体な空気感が笑いを誘うし、なんだかんだ愛おしすぎて吐いた(全身映るくらいの長回し)。本当そういう感じで、一見相反する感情・要素もごちゃまぜに混在してるみたい。うん、そこが好き。甘いものに塩かけてより甘くなるじゃないけど、結果、より強く記憶に残るヘンテコなカオス。

当たり前が当たり前じゃなくなっていったときにやっと見えてくる当たり前すぎて今まで捉えられなかったもの、みたいな。ベーシストからライブハウスのスタッフという縁の下の力持ち感。実話だからもちろん意図的でないけど、結果的にそこにも意味を見出だせるというか、どこか共感ポイントっぽくて主人公の個性。でも、無為に日々をやり過ごすように生きてしまうことって誰にでもきっとあると思う。何かに救われて夢中になって、目先の"今"その瞬間にワチャワチャ感。
階段という象徴的なショットに、シーン毎によく考えられた照明。冒頭で一番下の主人公・劔は上がっていくしかない。例えその真ん中がどれだけ楽しくても、待ってるこれからはもっと楽しいかもしれない。今が楽しいなら10年後は超!楽しい、20年後は超!超!楽しくなるかもしれないから。ううん、僕だってそうしてやるんだ。時間行き来しまくりで、そこは少しややこしくなるきらいあるかもと思った(テンポ悪くなる?感情遮断する?)けど、きっと観客それぞれ自分にとっての思い出・記憶ってそんなもんだし、本作に限ってはそれもいいんじゃないかなと思った。なんか、本編中ずっと「最高!!」って感じじゃないんだけど、終わったときに「あ〜やっぱりよかったなぁ」ってしみじみと等身大に噛みしめるような。

日本映画界で今もっとも脂の乗ってる大好きな松坂桃李、今回も最高。ボサボケの髪型や赤い上着だけでなく、丸まった背中や喋り方、その一つ一つが「あぁ、こういう人なんだろうな」と思わせてくれる。
あと、仲野太賀が最高すぎた。安定に若葉竜也も大好き。めちゃくちゃ笑わせてもらった。何気ないやり取りも生き生きと微笑ましく秀逸。どのキャストもよかった。あべの支部最高!正直、日常生活の中では、人によっては引くかもしれない人々("タイプの人種")を、ここまで魅力的に描き、体現してしまうとは!本当に、卒業のない(自分で卒業しないといけない?)"中学10年生" = 遅れてきた青春を謳歌する仲良さそうな感じが伝わってきたな。恋愛研究会は恋愛進行形。セブンはブロンズ像になります。目ぇ光るねん。
個人的に器小さくてプライド高いネット弁慶コズミンに笑わせてもらいながらも、感情移入した。自分が例えば同じことになったときにこんなに仲間たちがいて、アツく送ってくれるかな…なんて想像したら、絶対無理だなって思っちゃったよ。「自分なんか」ってすぐ思っちゃうけど、自分もしぶとく"生"にしがみついてやりたい。

舞台挨拶行きたかったな〜

とぽとぽ