劇場公開日 2020年11月6日

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「オラだばオメだ。」おらおらでひとりいぐも 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5オラだばオメだ。

2020年11月20日
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鑑賞方法:映画館

リトルホンダ的な三人が、にぎやかに騒ぐ。俺たちはお前だと、三人が三人ともさも当然じゃないかと笑って返す。そんな一人妄想に耽る、桃子さんの侘しい余生。新しい知識を得る喜びはあるものの、夫には早く死に別れ、二人の子供たちとは疎遠。おそらく、ご近所に親しい友人もいない。好きだった夫との思い出話を脳内再生しながら、ぼそりとつぶやく。「おら、ちゃんと生ぎだが?」と。
ああ、なんだか、今の自分もこれに近いところがあるなあ、としみじみ。悲しくはないが、自分も「これでよかったのか?」と振り返ることがあるもの。

さて、あの三人、名前はなんだとエンドロールを見送ると、「寂しさ1 寂しさ2 寂しさ3」とあった。(ちなみに、六角さん演じる寝起きの男にも「どうせ」という名前があった。)
あの騒がしさは、寂しい感情の裏返しなのか、とドキリとした。たぶん、はじめはひとりだったんだろう。それがどんどん増殖したんじゃないだろうか。じゃあ、もっと増えるのか?ほかの感情も擬人化されて空想の世界の住人となるのか?ああそうだもしかして、独り言で誰かと喋っている老人は、こういう空想の住人を何人も抱えているのか。そう思ったら、寂しくもなったのだけど、案外楽しんじゃえばいいのか?とも思えて、晴れやかにもなってきた。人間の感情は、どうやら図太いのかもしれない。

そうそう、ハナレグミの歌、沁みるなあ。それに田中裕子、おばあちゃんだけど可愛いなあ。そう思えたから、☆半分おまけした。

栗太郎