「黒くて、暗くて、ブチ切れてるモノなーんだ? 長い長〜いハロウィーンの始まり始まり…。」THE BATMAN ザ・バットマン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
黒くて、暗くて、ブチ切れてるモノなーんだ? 長い長〜いハロウィーンの始まり始まり…。
復讐に取り憑かれた青年ブルース・ウェイン/バットマンと、犯行現場になぞなぞを残す連続殺人犯「リドラー」との戦いを描いたサスペンス&スーパーヒーロー映画。
主人公ブルース・ウェイン/バットマンを演じるのは、『ハリー・ポッター』シリーズや『トワイライト』シリーズのロバート・パティンソン。
ナイトクラブ「アイスバーグ・ラウンジ」のオーナー、オズワルド・コブルポット/ペンギンを演じるのは、『マイノリティ・リポート』『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の、名優コリン・ファレル。
連続殺人犯リドラーを演じるのは、『リトル・ミス・サンシャイン』『それでも夜は明ける』のポール・ダノ。
女盗賊セリーナ・カイル/キャットウーマンを演じるのは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』のゾーイ・クラヴィッツ。
謎の囚人を演じるのは『ダンケルク』『エターナルズ』の、名優バリー・コーガン。
I ❤️Batman!
というわけで、期待と不安の中、この超話題作を鑑賞〜♪
3時間という上映時間を知った時はゲロ吐きそうになったけど、いざ観てみたらあっという間。かなり楽しい映画であることは間違いない!
総評としては満足!
しかし、「最高〜!Foo〜↑↑♪」という部分と、「なんやこれ…」という部分がはっきり分かれている作品だったように思う。
最高ポイント①
「バットマンが超カッコ良い!」
はいもうこれに尽きます。バットマンをカッコ良く描けているというだけで、この映画合格〜💮
かつては「シャベル・フェイス」なんて馬鹿にされていたロバート・パティンソンだけど、ここ最近の彼のオーラは半端無いと思う。今一番脂が乗ってる若手俳優なんじゃないか?
パティンソンの特徴的なアゴは、バットマンのコスチュームに身を包む時の為に存在していたのか!と言いたくなるほど、彼の演じるバットマンはcool!
個人的にはぶっちぎりで過去最高のバットマンだと思う。
本作のバッツはとにかくヤベー奴。周りの警官たちからも「サイコ野郎」と悪態をつかれるほどの狂人である。
登場シーンの、完全にブチ切れているのがわかる怒気を孕んだ歩き方が見事。その後のチンピラ撲殺未遂シーンで、今回のバッツがどういう人物なのか一髪でわからせるという演出も見事だった。
ペンギンとのカーチェイスシーンもGOOD!🚗💨
煽り運転でひっくり返したペンギンの元へ、のっしのっしと歩み寄るあのシーンの神々しさ。もうあの足音、完全に『ドラゴンボール』のセルやん!怖いってっ!!
正義のスーパーヒーローとは到底思えない、圧倒的な恐怖の演出、完璧です🦇
目の周りが黒く塗りつぶされており、顔色は蒼白。
このブルースの素顔は、どうしてもジョーカーの顔を思い起こさせる。彼の危うい精神状況が、宿敵そっくりの素顔という形で表されている点も、スマートで上手い!
そしてあのクライマックス。
暴力で悪を制するというバイオレンスな正義像から、暗闇の中で市民を導くというマーシーな正義像への変換。力なき者を助けることこそ、スーパーヒーローの本質であるはず。それを最後の最後で、完璧な形で表現してくれた。あの発煙筒のシーンだけで、100億万点!!!
…後述するけど、今回のバッツは意外と可愛いところがあるのも良ポイント✨😆
最高ポイント②
「リドラーを演じるポール・ダノ!」
今回のメイン・ヴィランであるリドラー❓犯行現場に必ずなぞなぞを置いていくという、常軌を逸したサイコパスである。
このリドラーが関係するシークエンスはどこも良い!市長殺害シーンや、検事を追い詰める爆弾シーンなど、彼が醸す緊張感は素晴らしいの一語に尽きる✨
欲を言えばもっとグロさが欲しかったけど、まぁそこは全年齢向けのアメコミ映画だから仕方ないか。
そして、何よりも良かったのはリドラーの正体。
リドラーの正体は、エドワード・ナッシュトンという会計士。ちなみにエドワード・ニグマというのがリドラーの本来の本名だが、これはあまりにバカっぽいということで変更されたのだとか(略してエニグマ=謎)😅
このエドワード・ナッシュトン、とにかくショボ〜くて冴えな〜い男。カフェでの逮捕シーンは、「え〜っ!こんな奴がこの事件の首謀者なの!?」という、とても良い意味での裏切りがあった。
自己顕示欲の塊という犯人像は、現代のインフルエンサー崇拝社会への皮肉のようでもあり、またジョン・レノンを暗殺したマーク・チャップマンを連想させる感じもあり…。
エドワードの見た目や性格は、ブライアン・ボランド原作の超名作短編コミック「罪なき市民」に登場する少年から引用したのかな?
とにかく、ポール・ダノの普通の人っぽさこそが今回のキモ。
どんなに普通っぽい見た目でも、会計士のように地に足のついた職種の人間でも、腹には一物抱えているのだ、という描き方は非常に今日的な犯人像だと思う。
そして、自分が抱える鬱憤を、社会に対する制裁という体を隠れ蓑にして晴らしているいうのは、現代のネットリンチを比喩しているようで興味深かった。
最高ポイント③
「コミカルなシーンが多くて、何となくチャーミング😍」
本作はダークな映画という触れ込みだし、実際陰鬱な側面が強い作品ではあるんだけど、なんか抜けているところも多くてそこが非常にチャーミングである。
例えば冒頭、日記を書いているブルース・ウェイン。
その内容はというと…。
「2年間の夜が、俺を夜行性動物へと変えた。闇に潜んでいる…?いや違う。俺こそが闇なのだ…カキカキー_φ(・_・」
はいもう完全に厨二病。このノートは黒歴史確定です。
こういうところとか、意味もなく上半身裸になって、床にわざとらしく相関図を書き始めるところとか、いやもう本当に今回のブルースは可愛い。サングラスとか掛けてムダにカッコつけてるから、余計に可愛いらしいです!
ジム・ゴードンをぶん殴ってから、警察署を脱出するまでの一連のシーンも本当にコメディ!
必要以上に強いパンチにまず一笑い😁
まるで宮崎駿のアニメに出てくる警察官のように、ワラワラと湧いては追いかけてくる警官たちに二笑い😆
カッコつけて飛び降りたのに、着地に失敗しちゃう姿に三笑い🤣
その後、カットが変わると何事も無かったかのようにカッコつけているバッツに四笑い😂
このシーンには60年代ドラマ版の「バットマンのテーマ」を流して欲しかったなぁ〜。
バットマ〜ン♫デケデケデケ。バットマ〜ン♫
もしくはプリンスの「バットダンス」が流れたらテンションMAXだったのに〜😗
農協牛乳〜♫
事程左様に、なんか抜けている…というか厨二病感こそが本作のキモ。「お前なぁ…」とボヤきたくなるようなブルースの未熟さがよく表されており、それが他のバットマン映画と一線を画すチャームになっているように思います。
ここからは悪いポイント。
①「上映時間が長え」
たしかに退屈はしなかったが、だからといってこれに3時間も掛ける必要があったとは思えない。
誰の目から見ても明らかなように、本作はデヴィッド・フィンチャーの『セブン』(1995)と『ゾディアック』(2006)に大きな影響を受けている。またリドラーの謎によって物語がどんどん前に進んでいくという点は『ゲーム』(1997)や『ゴーン・ガール』(2014)を思い起こさせる。
と、マット・リーヴス監督ってフィンチャー映画大好きなのね、ということはわかるんだけどさ。ならフィンチャー作品のコンパクトさも真似してよ〜…。
フィンチャー作品も結構長尺って印象があるけど、『セブン』や『ゲーム』は120分。『ゾディアック』や『ゴーン・ガール』は150分。意外と短いんですよね。
この内、『ゾディアック』は正直間伸びしていると思うけど、後の3本の時間配分は完璧。特に『セブン』は、よくあの内容を2時間に収めたな、と思うくらいタイトでシャープでクール。
本作も、基本的には『セブン』とやってることおんなじなんだから2時間に纏める事が出来ただろ〜、と思っちゃう。
んじゃあ、具体的にどこを削るかという事なんだけど、ゾーイ・クラヴィッツには悪いけどキャットウーマン周辺のエピソードは正直全然要らんと思う。はっきり言って、彼女の女友達が失踪する件とか、彼女の父親がファルコーネだった件とか、一切興味が持てなかった。
こちとらリドラーvsバットマンを観に来てる訳ですよ。なんかファルコーネがどうたらこうたらの件が長すぎて、中盤メインのストーリーラインから完全にリドラーがフェードアウトしていた。もっとタイトに、リドラーだけに集中して物語を描いて欲しい。
他にも、脚本的にモタモタしているところが多すぎる!!
例えば、ブルースがファルコーネから父親の真相を告げられる件。
😈「お前の父親は悪人なんやで〜」
🦇「そんな…。もう何も信じられへん…。」
👨🦳「いや、お父様は善人です。悪いのはファルコーネです。」
🦇「なんやそうなんか!良かった〜…。」
ここいる!!??
なんかこんな感じでまどろっこしいところが多かったな〜。
ペンギンとのバトルは最高だったけど、あそこも物語的には別に必要ないし…。
悪いポイント②
「ぶっちゃけ、お話がつまらない。」
ゴッサム腐敗の原因である「ネズミ」は誰だ!というのがキーなんだけど、そこそんな気になる?
しかも、黒幕っぽい奴が本当に黒幕だったという身も蓋もない展開。サスペンスとしてそれって最もやっちゃいけない事じゃないの?
リドラーの謎を解く事で、次の被害者や犯行目的を明らかにしていく、という探偵要素が本作の見所。
そもそも、DCの「D」とは「Detective=探偵」の「D」な訳だから、この原点回帰は完璧に正しい。
しかし、この探偵要素が全然上手い事言っていない。
そもそも、バットマンよりもアルフレッドの方が探偵っぽいことしてるし…。
リドラーの謎を解いていく事で、複数の容疑者から犯人がエドワードであることを推理するとか、そういう真っ向勝負な探偵要素が欲しかった。
あと、あの最終計画まどろっこしすぎん?街を洪水で水浸しにして、一箇所に集まった住人を虐殺していくって、なんやその計画?
あんなに都合よくリドラーのフォロワーが集まっていたことも不自然だし、クライマックスの洪水シークエンスは、バッツの発煙筒以外はダメダメだった🙅♂️
もう一つ細かいことを言えば、せっかく「ヒポクラテスの誓い」というワードが出てきたのだから、それを脚本に組み入れてほしかった。
リドラーの謎を解く事で、次の目標がファルコーネである事が発覚。ファルコーネが父親の仇であることを知ったバットマンは大いに悩むが、ギリギリのところでリドラーからファルコーネの命を救う…、みたいな熱い展開が欲しかった。
愛ゆえにレビューが長くなってしまった😅
いや色々言いましたけど、カッコいいバッツが観れたので、基本的には大満足なんですよ!
気になるのは今後のシリーズ化。
うおっ!奴が登場するのか…🃏という幕引きには、どうしたって期待が高まってしまう。
いやこれ『バットマン・ビギンズ』(2005)でやった奴じゃん!!とか思わんこともないのだけれど、まぁやっぱりジョーカーあってのバッツですからねえ。
なんでもニコラス・ケイジが、次回作で是非ともヴィラン、特にドラマシリーズ(1966-1968)に登場したエッグヘッドというキャラクターを演じたいって言っているらしい。
ニコケイなら役者の格的にも問題ないし、映画も絶対に面白くなる!次回は🃏&🥚でどうでしょう、マット・リーヴス監督!?