「理解しようとせずあくまで映像を楽しもう」マトリックス レザレクションズ ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)
理解しようとせずあくまで映像を楽しもう
本作以前の三部作はすべて観ているが、ほぼ内容を忘れている。そもそもこの世界観をちっとも理解していない。が、本作は、前の筋を追えていなくて、ゲームにからっきし無関心で、ゲームの中のキャラとして行動したことのない私でも、十分堪能できるのだ。
今自分が生きている空間がそもそも仮想空間で、その仮想空間の中にゲームの世界があるという発想自体が、すでに斬新でぶっ飛んでいる。ここさえ押さえとけば、あとはこのマトリックスでしか見られない映像をいらぬことを考えずに楽しめばいいだけのことだ。
サルトルの言葉を借りれば、「人間は今ある状態の自分ではない。今の状態にないもののすべてでありうる」ということである。サルトルは、それを「無」(何にでもなれる可能性)と表現しているが、「無」だから仮想現実の世界でも、果敢に行動すればいかようなキャラにもなれる。本作のキャラたちは、その解放感を十二分に与えてくれるのだ。
ある意味哲学的な思索の世界に我々を陥れるのだが、何でもあり、何にでもなれる、という映画そのものの本質を見事に突いた作品と言えよう。だから、4部作をマニュアル本のごとく理解しなければ、という変な義務感は捨て去って、自由気ままに、凄い!と思うところだけを掬い取る見方をぜひお薦めする。
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