「セルフパロディーではない形で過去作の相対化に挑んだ一作。」マトリックス レザレクションズ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
セルフパロディーではない形で過去作の相対化に挑んだ一作。
作中で、登場人物がどう考えても本作が作られた事情を暴露しているとしか思えないような台詞を呟いたことがおかしく、なるほどこれは『マトリックス』の前シリーズを現在の視点で総括し直した作品なんだな、と改めて納得しました。
過去作との対比や世界設定の説明が多く(非常に盛り上がるはずの場面すら)、上映時間も相まってやや鈍重な感のある内容ではあります。しかし『マトリックス』(1999)公開以降、本シリーズが世界にどう影響を与え、何が変化し、あるいは何が変わらなかったのか、をウォシャウスキー監督自身が映像を通じて総括するためには、やはり最低限これだけの時間が必要だったんだ、と実感しました。
黒を基調としたスタイル、美術は相変わらずかっこいいんだけど、この『マトリックス』的ファッションがその後あまりにも当たり前になった結果、今では陳腐とすら感じられるようになりました。本作ではあえて、過去作とそっくりの場面を入れることで(インサートカットは過去作そのまま)、この陳腐さという要素を作品に取り込んで、そこから新たなメッセージを打ち出そうとしています。
特にウォシャウスキー姉妹は『マトリックス』のイメージが排他主義や選民主義のシンボルとして流通していることに強い不快感を感じているらしく、繰り返し既存の『マトリックス』を相対化しつつ、キャリー=アン・モスの物語として収斂させていきます。彼女の存在によって、『マトリックス 』が変えようとして変わらなかったものが何なのかが明らかになる仕組みとなっています。鑑賞後あらためてポスターを見返してみると、まさに本作を一つのアートワークで表現していることが分かりました。
パンフレットは豪華版と通常版の二種類あるのですが、内容は全く別物とのこと。両方買ったら鑑賞二回分になるかも!