「それは、自分の目で確かめろ」マトリックス レザレクションズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
それは、自分の目で確かめろ
自分の目で確かめろ。
『マトリックス』新章。
まさか本当に新作が作られるとは…。
でも改めて見ても思ったけど、『レボリューションズ』がアーキテクトと預言者の訳の分からんお喋りで終わり、ネオもどうなったのか、完結編と銘打った割りに消化不良で謎を残したまま…。
18年の時を経て、果たしてこれを挽回出来るか…?
今年最後の話題作、今年最後のハリウッド超大作、今年最後のネタバレ厳禁。
と言うより、いつもながらの公開まで詳細不明。
それでも解禁された少ない情報によると、今回は『レボリューションズ』の続きではなく『1』の続き。
…いやいや! しっかりと前3作の正統なるシリーズ最新作。
皆さん、シリーズお復習してから観に行った方がいいですよ。
ワーナーロゴとそれに掛かるあの音楽。
緑文字のメインタイトル。
コンピュータ越しの会話とハッキング。
18年経ってもお馴染みの始まり方。
シリーズ物はやはり“お馴染み感”が好き。
OPもトリニティーのアクション。
しかも、『1』と激似。
ここで、ふと気付く。トリニティーって死んだよね…?
“この場面”を見ている人物たち。バッグスら今回の新たな登場人物。
“伝説”となっている“この場面”だが、展開が狂う。
さらに、エージェントに襲撃される。
間一髪、バッグスを救ったのは、まさかの黒人のエージェント・スミス…!?
彼も自分自身や“この世界”に違和感を感じ始め、バッグスはアレを飲ませる。赤いピルを。
覚醒。モーフィアス…いや、“モーフィアス2”!
あの命運懸けた闘いは終わった…筈だったが、“マトリックス”の支配は続いていた…?
“マトリックス”は無限ループなのか…?
そして今、“マトリックス”に何が起きようとしているのか…?
“マトリックス”が無限ループなら、別の未来、別の人生もあった筈。
つまり、もし、青い方のピルを飲んでいたら…?
トーマス・アンダーソン。世界的ゲームクリエイター。
救世主ネオが仮想世界の支配から人類を救う。ゲームのタイトルは、『マトリックス』!
『マトリックス』3部作は大ヒットとし、会社では『4』の企画が。更なるシリーズ続行構想も。
が、そんな会社とは裏腹にアンダーソンは難色を示し…。
この企画会議シーンがユニーク。
言うなれば、監督自ら自問自答する、
“『マトリックス』とは何ぞや?”
革命だったのか。
一時のブームだけに終わったのか。
今も一部のマニア/ファンだけのものなのか。
パロディー化したバレットタイムや暴力的なアクションしか覚えて貰えないのか。
その後の自分たちの重荷になってしまったのか…?
今回アンディは外れたが、ラナ単独監督。新しいアイデアがあって最新作を作るに至ったらしいが、その一つにこれらもう一度『マトリックス』と向き合いたい思いがあったのかもしれない。
カフェで見掛ける主婦ティファニーが気になるアンダーソン。何処かであったような…?
度々見る仮想世界の夢に苦しみ、アナリストから青いピルを処方し、何とか普通の生活を送っていた。
そんな彼の前に現れたアノ男。
これは夢か、自分の作ったゲームか、それとも“デジャヴ”か。
始まりは『1』を彷彿。
違和感を感じる世界、自分自身。真実。目醒めの時…。
仲間との出会い。カンフー修行。そして覚醒…。
ネオとしての記憶も取り戻す。
それはある意味信じ難い事でもあった。
あの闘いで終わった筈ではないのか。“マトリックス”は続いていたのか。
自分たちの闘いや犠牲は何だったのか。無駄だったのか…?
決してそうではない。
あの闘いによって“マトリックス”にも変革が訪れた。人類に協力する機械も。
あの闘いは伝説化され、ネオやトリニティーは語り継がれている…。
無駄ではなかった。
中盤からはトリニティーの存在が軸となってくる。今、彼女は…?
改めて『マトリックス』は、ネオとトリニティーのラブストーリーでもあると感じた。
そして今回の“敵”。宿敵スミスも(意外な形で)登場するが、新たな脅威が立ち塞がる。
前半は『1』を踏襲しつつ、新たな登場人物、新たな展開、新たな敵。
『マトリックス』新章。
18年経ってもネオがキアヌのハマり役である事に異論ある人は居ないだろう。端正な魅力、忘れぬカンフー・アクション。
ネオの再覚醒であると共に、トリニティーの再覚醒。キャリー=アン・モスもまたハマり役。
ジェイダ・ピンケット=スミス、ランベール・ウィルソンらが続投。
ジェシカ・ヘンウィック、ニール・パトリック・ハリスらが新戦。
しかし残念だったのは、ローレンス・フィッシュバーンとヒューゴ・ウィーヴィングの降板。フィッシュバーンのモーフィアス、ウィーヴィングのスミスも居てこその『マトリックス』でもあった。
各々のスケジュールの事情でもあり、物語の展開上致し方ない。が、キャラは引き続き登場で演者が“変換”。とりわけ新モーフィアス役のヤーヤ・アブドゥル・マティーン2世が様になっていった。
『マトリックス』と言えば、“映像革命”。
すでに予告編でも解禁されているお馴染みの銃弾止め、ミサイルを曲げてそれをヘリに。
でも最も圧巻のアクション・シーンは、クライマックス。ヘリ追尾とビルからの“人間爆弾”の中、バイクで逃走。
実を言うと正直、CG技術は進化したがビジュアルやアクションは前3作より見せ場に欠けた。が、このシーンはボルテージが上がった。
赤と青のピル、ウサギのタトゥー、黒猫のデジャヴ…リンクネタ多々。
のみならず、前3作の映像も挿入され、特にネオとトリニティーのラブストーリーについては大きく関わり、本当に前3作を見ておいた方がいい。
パラレルワールド的な世界観はSFあるある。そのアイデアは悪くない。
『1』を思いっ切りなぞった前半は面白い。
が、中盤はこの作品特有の小難しい話。何となく分かったような、ついていけなかったような…。頭がくらくらしてしまった。
クライマックスのアクションでまた盛り返したけど。
やはりストーリーは『1』がシンプルで一番。今回色々なテーマやメッセージが込められているにせよ、さすがにこれは覆せない。
『マトリックス』ーーー。
それは、CG技術、アクション、映像表現に革命を起こしたのは事実。
あれから18年。待望の最新作ともなれば、賛否両論。すでに。
自分的には、多少蛇足に感じた点もあったが、『レボリューションズ』の消化不良を少なからず解消してくれた。
『マトリックス』のテーマの一つに、“選択”。
あなたなら、本作をどう見るか。
再び新たな仮想世界と救世主の闘いを。
残念ながら詳しく語る事は出来ない。
自分の目で確かめろ。
『キャットリックス』!
…じゃなくて、
『マトリックス』新章!