「【怖いもの/ミステリー・トレイン】」死霊館 悪魔のせいなら、無罪。 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【怖いもの/ミステリー・トレイン】
今回は、前2作と異なり、取り憑くのは所謂”物件”ではない。
そして、前2作は取り憑く理由が不明で、僕は、それが怖いと思ったが、今回は、明らかな原因がある。
また、長距離を移動したり、推理したり、ウォーレン夫婦が、それぞれ命の危険に晒されたりと、サスペンサ感も満載で、ホラーとしては、エンタメ感も強い作品になっていると思う。
しかし、どうして欧米では、悪魔が悪さをするのだろうか。
キリスト教が誕生する数百年以上前からあった、善悪二元論をベースとするゾロアスター教の影響があるというようなことを読んだことはあるが、ユダヤ教には、こうした考え方はないように思うし、仏教の地獄という考え方が、これの影響だと仮定しても、地獄の鬼や邪鬼が取り憑いて呪い殺すなんていう話しは仏教では聞いたことがない。
やはり、征服した歴史が背景にあって、恨みを抱かれることに対する漠然とした不安を抱え、常に怯えているからなのだろうか。
日本では、蜂起した昔の武将が討ち取られ、京都の三条河原でさらし首にされたが、それが遠く関東まで飛翔して、恐れられ、神様として祀られ、人々を見守るような存在になったりするが、考えてみたら、一神教には、こんな例はなしい、魔女だと断定されれば、磔にされて焼かれて、肉体は原型も無くなるのだから、結構、容赦のない、怖い宗教文化だなと考えたりする。
武将が誰を指すかは、お分かりだと思うが、日本には類似したような感じで、神様になった怨霊のようなものは他にもある。
(以下ネタバレ)
冒頭で、理由が分からないのが怖いと書いたが、それは、今も変わらず、怖いと思う。
今回は、悪魔崇拝に執着した人間がいて、明らかに、これが原因なのだが、実は、その執着心の動機が一体何だったのかまで明らかにはならない。
悪魔は混沌を欲しているのだという言葉もあったが、悪魔崇拝をする人間も混沌を欲しているのだろうか。
やっぱり、理由が分からないものは怖いのだ。
そして、実は、人間の執着心が最も怖かったりするのだと考えたりする。
僕はお寺の血筋だが、仏教では執着心を持たないようにと徹底的に説かれる。
まあ今は生臭坊主もいるし、欧米的な新自由資本主義的なアニマルスピリットで、執着心は善のように語られる場合もあるが、もう少し考え直さないと、日本にも悪魔が湧いて出てくるかもしれない。
お経や、ご真言や、陀羅尼で追い払えなかったらどうしようか悩んでしまう。
ところで、ロレインは、生前にも死後にも。エルビスに会ったことがあるそう。
ジム・ジャームッシュの「ミステリー・トレイン」を思い出してしまった。