劇場公開日 2021年4月2日

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「本作品単独で鑑賞した限りはなんとも消化不良」劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0本作品単独で鑑賞した限りはなんとも消化不良

2021年4月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ドラマ版は観ておらず、前情報無しでの鑑賞。北村一輝がそのキャラクターに似合わず実直で朴訥な巡査部長を演じているのがいい。ちなみに警察組織では巡査部長は巡査に続いて下から二番目の階級でその上が警部補だから、大山巡査部長は坂口健太郎の三枝警部補に対して敬語になる。三枝が大山に対して敬語なのは、大山が年上だからということもあるだろうが、主には三枝のキャラクターだ。
 坂口健太郎はどんな役を演じても坂口健太郎である。本作品でも警部補役の坂口健太郎にしか見えなかった。北村一輝が大山巡査部長にしか見えなかったのと対照的である。そのあたりは役者としてのキャリアの差だろうか。
 PCとネットの専門家を演じた池田鉄洋が上手い。脇役ばかりだが自分の役に徹して演技に隙がない。こういう役者がいると作品が締まる。本作品でも終盤で重要な役どころを演じていた。
 作品としては意外にありきたりで予定調和的である。現場の刑事が初めて行った場所で的確な対応をしつつ事件の全体を推理して指揮するなどといったことはほぼ不可能だが、似たような設定はアメリカのドラマ「24 twenty four」などにも見られる。テレ朝の「相棒」もそのひとつだろう。
 現在と過去とが繋がるトランシーバーというアイデアはなかなかいいのだが、どこかで起きているはずのタイムパラドックスが気になるし、どうして過去と現在が繋がったのかも気になる。もしかしたらドラマ版を観ていれば分かったのかもしれない。三枝警部補が肉弾戦で格闘する謎の男達の正体も不明のままで、本作品単独で鑑賞した限りは、なんとも消化不良だった。

耶馬英彦