「エネルギッシュなモロッコの街角が映される。しかし、物語は静かな家の...」モロッコ、彼女たちの朝 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
エネルギッシュなモロッコの街角が映される。しかし、物語は静かな家の...
エネルギッシュなモロッコの街角が映される。しかし、物語は静かな家の中で進行していく。未婚の妊娠女性、サミアを助けたシングルマザー、アブラとその娘。三人の連帯を軸に、生活を通して尊厳を取り戻していこうとする女性の姿を美しい映像で捉えている。
この映画の生活感が抜群に良い。本当にこういう生活があるのだろうという、強い説得力がある。パン屋を営むアブラをサミアが手伝うようになる。キッチンで交わされる豊かなやり取り。家庭生活の中に、これだけの豊かなドラマがあるのだとこの映画は教えてくれる。
未婚の母がタブーの文化の中でサミアは、社会に認められない存在だ。そんな彼女を夫が死んで社会との関わりを極力なくそうとしているかのように暮らすシングルマザーが抱きとめる。社会に弾かれた者たちの連帯の美しさは、社会の残酷さと表裏一体。彼女たちが自由になれる日はいつのことだろうか。
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