「今年の記憶に残る一本になるでしょう」モロッコ、彼女たちの朝 ハルヒマンさんの映画レビュー(感想・評価)
今年の記憶に残る一本になるでしょう
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早くから観ようと思ってはいましたが上映時刻が合わない等の理由で今日になってしまいました。
・監督のマリヤム・トゥザニの表現力に感心しました。主人公の女性二人を戦わせます。あ互いに、逃げてどうするのだという激励の応酬です。言葉が過剰でなく、最小限にして足りないところは表情で補います。素晴らしい演技ですが、当然監督の要求に応えてのことです。特にパン屋の主人を演じるルブナ・アザバルがいいですね。先ほど書きましたが表情が言葉以上のものを語っているんです。
・男社会のなかで生きることの大変さを表現しているのですが、泣き寝入りせず、希望をもって少しずつでも前向きに生きようとさせます。程度の差こそあれ、同じような境遇にいる人たちへの励ましのメッセージであり、見ぬふりをしている男たちへの批判的メッセージでもあります。
・赤ちゃんは可愛いですね。赤ちゃんは何の演技もしませんが、何分カメラを回しても飽きません。アダムと名付けますが、希望の象徴ですね。
・ナイフとフォークを何度も何度も並べなおす場面があります。既存の規律や制度を表しているのでしょう。従順にしたがって生きることを暗黙のうちに強要されている社会的現実を表現していることは容易に理解できます。
・最後は、出産したもう一人の主人公がパン屋の母子を残してひっそり去っていく場面で終わります。エンディングはどうなるのだろうかと考えていましたが、ある意味、あっけない終わり方です。この監督は厳しいなあと思いました。答えを与えてくれません。ここから先は観た人が自分で考えなさいよということでしょう。
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