「時代はフュージョンへ」エイブのキッチンストーリー KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
時代はフュージョンへ
東京国際映画祭にて鑑賞。非常にポップで大人から子供まで楽しめる見易い作品であり、映画祭に相応しい作品であった。
エイブは人種も宗教も異なる両親から生まれ育った。両親はその辺りに比較的マイルドさや理解はあるものの祖父母となるとまだまだ偏見や頑固さが残り、故に両親やエイブを巻き込みトラブルを頻繁に起こす。
エイブは料理、そして料理の師として仰ぐチコの影響から両親や祖父母の異なる文化や宗教、そして料理をフュージョンして家族を一つにしようと努力する。
時には料理を混じり合わせ、時には言語を混じり合わせたりする。それが返って勘に触りフュージョンする事がコンフュージョンを招く事にもなる。
どんなに努力しても一つになれない家族を背にエイブは家出をする。残された家族は中々エイブが見つからない事から不安になり一度落ち着く努力をする。初めてエイブが作った料理を冷静になった口にする。
異なる国文化の料理を口にし自分の体に入れる事でこの作品としては相手を理解する事に繋がり最後は一つになる。
便利でグローバル化になった時代になった今、自分と異なる文化、宗教そして価値観に触れる機会は増え、今後もどんどん増える事になるだろう。
時としてそれらが対になる事もあるだろう。それらにぶつかった際に何十年も培ってきた自信の価値観に変化を与えるのは決して容易ではない。ただそこから逃げてはいけない。時代はフュージョンする事、できる事を求められてるのかもしれない。
チコも劇中で語っていたが、それらがすぐに結果となりうまくいく事は容易ではない。ぶつかり失敗する事の方が多いだろう。ただそこから逃げてはいけない。問題にぶつかり少しづつ少しづつ変化を与えて、真なる答えを見つける事が大切なのだろう。
そういう事の積み重ねが今のグローバル化の時代も築きあげたのではないか。
この作品においては宗教や文化の違いを料理や家族関係においてフュージョンさせた。これら以外にもいくらでも異なる存在、対する価値観などはたくさん存在する。
それらを1つにまとめるのは大変難しい事だが、同時にまとめる事ができたら、新しいものを生み出し平和にまた一歩近づく。
時にはぶつかりや争いを避け異なる存在から逃げるのも大切な時もあるかも知れないが、この作品を見てフュージョンさせ新しいものを生み出す美しさ、素晴らしさを感じさせてくれる。そんな素晴らしい作品であった。非常に貴重な時間を過ごす事ができた。