劇場公開日 2020年2月21日

「子供たちVS優しくない世界」魚座どうし 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5子供たちVS優しくない世界

2020年7月31日
PCから投稿

19歳で撮ったという怪作『あみこ』の山中瑶子監督が、文化庁委託事業の「プロのスタッフを使って35mmフィルムで短編を撮る」という企画に参加した30分ほどの作品だが、山中監督の恐るべき才能がここでも炸裂している。

小学生の女の子と男の子、近いところに住んでいるけれど交わることのない二人の日常が綴られているのだが、周りの大人たちの不安定さが、日常にいつ崩壊するかわからない脆さを与えていて、もうホラー映画を見てるみたいにハラハラするし不安になる。

それでいて、ミニマムでこぢんまりとした作りに陥ったりはせず、小さな話なのに、子どもたちを押しつぶしかねない大きな世界の存在を感じさえる。決して優しくはないけれど、外の世界には確かに可能性が広がっていて、子供たちがこの閉塞した日常が飛び出せる日を願わずにはいられない。

いや、そんな映画だったっけ?と思う人もいるかも知れないが、それはそれできっとこの映画の別の可能性なのだろう。決して一義的な解釈に収まることにない、なんとも挑戦的な作品なのである。

村山章