劇場公開日 2020年9月18日

  • 予告編を見る

「キム・スンウ監督の長編デビュー」ブリング・ミー・ホーム 尋ね人 ほんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0キム・スンウ監督の長編デビュー

2020年9月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

重苦しく、やりきれない韓国社会の闇を映してエンターテインメントに仕上げた手腕が凄い。行方不明になった息子を捜し続ける夫婦の物語。14年ぶりにスクリーン復帰したイ・ヨンエが、脚本を読んで出演を決めたという。汚れ役の母親の執念とまさに体当たりと言って良いアクションを含め、鬼気迫る熱演が光った。息子を捜し続けて6年。手がかりを掴んで追っていった先に待っていたのは、何ら罪の意識がなく、それどころか身寄りのない子を育ててやっているとさえ本気で思い込んでいる狂った人たち。ワイロをもらって一味に連なる悪徳警官が絡んで、救出はいよいよ絶望的となる。終盤は、思いも寄らない修羅場となって、世間から隔離して成り立っていた釣り場は一挙に崩壊の道をたどる。我が子を救おうとする母親の強さと自分を責め苛む弱さと。やつれてなお美しさが際立つヨンエが素晴らしい。自らの脚本で長編デビューを飾ったキム・スンウ監督は1980年生まれ。韓国映画界の水脈は尽きることがない。

ほんちゃん