「論争の先に見えた本当の敵は何か?」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
論争の先に見えた本当の敵は何か?
私は世代的に学生運動を殆ど知らない。まして三島由紀夫という人間も、歴史や国語の授業で聞いたくらいの門外漢だ。そんな私でもこの論戦からは目が離せなかった。何故なら、そこには日本の未来を憂う両者の"熱"があったからだ。
立場、思想は違えど、日本の進もうとしている方向に疑問を感じ、行動してきた両者。
だからこそ、彼らが舌戦の末に共通の敵のような物を見出した時の感覚には興奮するものがあった。
そしてその敵は今も変わらずそこにある。
悲しいかな、彼らは歴史に敗北し、我々はその後の日本を生きている。主体性のない国、空虚な日本というこの国で生きている。
もしも彼らの情熱があの時代を革新していたら、我々が住むこの国はもっと良い形になっていたのだろうか?
IFを語っても仕方がない。
理屈ではそう分かっても想像せずにはいられない。
一つだけ言える事は、熱情こそが世界を進める糧であってほしいという事だ。
熱情なき政治の先には腐敗しか待っていないのだから。
対立しているはずの全共闘の若者の演説を、どこか満足そうに笑みを湛えながら聞き入る三島の表情が印象的だった。彼らの熱情を見て、三島自身「この国もまだ捨てたもんじゃない」と、そんな希望をどこか見出していたのかもしれない。
未来を作るのは老人ではない、彼らのような活気ある若者であってほしいものだ。そんな未来に私は生きたい。そう思った。
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