「69年の「熱と敬意と言葉」に思う」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 室木雄太さんの映画レビュー(感想・評価)
69年の「熱と敬意と言葉」に思う
二度目の鑑賞、やはり言葉の力は満ちていた。
昔と今、そこを比べ悲観することに慣れては駄目だろう。しかし、あの年代特有な語りの熱量、言葉の緊張感、タバコの煙で曇る講堂… 確かに“この時代が最後だった”と自覚するに足りる、尖った思考の渦で発せられる主張と同調に、やはり憧れを禁じ得ない自分がいた。TBSが保存する、この貴重な映像資料を観たことは何度もあった。しかし、改めて「新しきを知る」真相に満ちた本作は、当事者達の証言が単なる回想に非ず、眼の奥に鋭さも保った声の主が、未だ「三島の思想と言葉」に対し「反論・尊敬・格闘」を繰り返していただろう事を感じさせた。多感な時期に「国運と自身の運命は同様」な死生観を抱いた若者が、あの8.15を境に分離した感覚を、取り戻さんとする思想の納得も禁じ得ない。そして、あの場において高圧的な態度や、語気を荒げる事なく、“まぁ先ずよく聞いてやろう”な理解への心構えが、双方にあった点が見過ごせない。やはり、何処かで“共通の敵”を見出していた、それ故教壇での一服も微笑ましく映っていたのかもしれない。正に愉快な一時を観た。
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