「文字通り大人と子供の喧嘩」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 あっきーさんの映画レビュー(感想・評価)
文字通り大人と子供の喧嘩
題名から天皇制の是非などについて両者が丁々発止の舌戦を繰り広げるのかと思っていたが全く違っていた。三島由紀夫は誠意を持って相手の意見に耳を傾けながら「直接民主主義を目指す点で君らと本質は同じ、我々は共闘できるんだ」と自らの政治的主張を明らかにする。一方東大生たちは本で読み齧った事実かどうかも分からない理論を前提に「偽の三段論法』で相手を論破する事が主目的であり、明確な主義主張はほとんど出てこない。論客と言われる学生も含め最後は「お前こんな理論も知らないの。レベルが違いすぎて話にならないね。時間の無駄だからオレ帰る』というような、今でいう「マウントを取る」ために議論があるように見えてしまった。最後は何の結論も出てないが同志感が芽生え、タバコを分け合うといったあたりは20歳過ぎの若者として無邪気で可愛い気もする。三島も「可愛いもんだなお前ら」と言ってそうな……先輩方には失礼ながら、難解な言語を駆使しつつ体制批判の議論を吹っかけ相手を論破するというのがあの頃の壮大なモラトリアムの過ごし方だったのかもしれない。だって後日談に登場する全共闘の人も楯の会も、その後は皆けっこう堅実な人生を生き、話し方もとっても分かりやすくなっているのだもの(芥さんは例外のようだが)。
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