「ジヨンは病気ではない。」82年生まれ、キム・ジヨン きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
ジヨンは病気ではない。
僕は、ほかの事を考えながら観ていました。
①ジヨンは病気などではない。
②『ジヨンは病気だ』と言うのは誰だ?。
そして
③「お前は病気なのだよ」と、繰り返し妻を説得するあの理解ありげで優しい夫は、果たして本当に正しいのか?
洗脳、虐待ではないのか?
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有史以来、“異言”をかたる者は“病人”のレッテルを貼られてきた。
彼女ら、彼らは、“異常者”としてその言葉を封じられてきた。
・巫女の託宣は命懸けだ。彼女らは神女として尊ばれるか、気がふれた女と指差される。綱渡りだ。
・ジョルダーノ・ブルーノ(16c.イタリア、修道士、科学者、哲学者)は宇宙の無限と天動説を主張し教会から異端宣告を受け火炙りになった
・同時代のガリレオもあわや危機一髪。
・時の権力に抗して声を上げ、異端とされて焚刑に処されたのはオルレアンの少女ジャンヌ・ダルク。
・旧ソ連では政治犯は精神病院でロボトミー手術だ。「“完全”であるはずの社会主義に異を唱える者は病人」の烙印を押される。脳にメスを入れられて声を奪われ喋れなくされる。
最近では習近平の写真に墨汁をかけて体制批判の声をネットに流した女性も、精神病院送りになったと報じられている。
枚挙にいとまがない。
説明が長くなったが、
ジヨンを見ながら僕は思うのだ、
ジヨンは病気か?
もしジヨンが病気でないとすれば、物語の主客は逆転するのではないか?
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「ジヨン、お前は病気なのだよ」
「お前は間違っている」
「黙りなさい」
「治療しなさい」とみんながジヨンに詰め寄る。
“精神病患者”として口を封じられるキム・ジヨン。
― 国家によって、
― 世間によって、
― 夫や父親によって、
― 義母によって、
そして、実母によって。
僕は優しくて理解あるあの夫の判断も、
なにか薄ら寒く感じる。
劇中のクライマックスは
亡き祖母がジヨンに憑依して母に語りかけるシーンだ。
憐れみとねぎらいの言葉をジヨンが母に語るシーン。息詰まるシーン。
「アイゴーオンマー!会いたかったよ、ありがとう!」と号泣しながら、母は祖母(=ジヨン)にしがみついても良かった。
しかしあの時、
寸手のところで我に帰ってしまった母。“正常な判断”で「娘ジヨンは病気だ」と判じてしまった母親。
僕は ただただ、母のあの躊躇い(ためらい)が残念で悲しい。
そりゃあ
僕もわかっていますよ、おそらくジヨンは、神経症で「産後うつ」なのでしょう。
でも、しつこいようだが、
娘が祖母になりかわって、母の人生の恢復のためにあの世から戻って来てくれて、母親に語りかけることの何処が病気なのだ?
娘の声の中に死んだ祖先=女たちの励ましを聞くことの何が病気だと言うのか?
母がよみがえって、自分に話し掛けてくれるこの上もない幸福な時を、そのまま直に受け止めて二人で「アイゴーオンマよー」と嬉し泣きに泣くことのいったい何処が病気なのだ?
残念だ。
祖母から母。母から娘。
そして娘から孫娘への、女の命の地下茎と、想いの血流まで否定をして壊してしまう、そんな現代社会こそ病んでいて悲しいと、
この映画を観て思ったのでした。
こんばんは、
🦒娘が祖母になりかわって、母の人生の恢復のためにあの世から戻って来てくれて、母親に語りかけることの何処が病気なのだ?🦒
↑のところ、納得納得、私も経験したいです。
誰もが近い未来に出産できたら世の中変わります。私はこの目で見てからあの世へと行きたいです。
本作を鑑賞して韓国も変化してきてると嬉しくなりました。作品で問題提議が出来てるので。日本とは違いますよね。女性から男性に性転換したユーチューバーが、女性の方が生きていて全然辛いと言ってました。月に半分は体調不良な女性は多いです。