「ホラー映画のような現実の中で。」82年生まれ、キム・ジヨン 今日は休館日。さんの映画レビュー(感想・評価)
ホラー映画のような現実の中で。
ある種のシチュエーションホラーだと考えて見ればいい。
登場人物の中で明らかな悪意を持つのは会社の理事をはじめとした数名だけ。それ以外の多くの人物は、各人の常識や文化の上で、あくまで悪意ではなく、ともすれば善意で行動している。だからこそ主人公は逃げ場がなく追い込まれ、精神に破綻をきたすまでに至る。
主人公だけでなく、多くの女性がこの状況に追い込まれ、困難をきたしている。彼女達を追い込む状況の構造、追い込まれる彼女達の描写がとても丁寧でわかりやすいのが、本作が良作たる所以。
語弊を恐れずに言えば、本作は非常に丁寧でわかりやすいホラー映画の良作である。冷たい無機物で段々と首を絞め潰されるような感覚は、たとえば黒沢清作品のそれに近い。そしてこれはファンタジーではなく、進行形の現実に基づいた私達の物語だ。そこに本作の凄みと、社会的な高い価値がある。
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