「☆☆★★★ 今、何故かクストリッツァが2年前に製作したドキュメンタ...」世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆★★★ 今、何故かクストリッツァが2年前に製作したドキュメンタ...
☆☆★★★
今、何故かクストリッツァが2年前に製作したドキュメンタリー映画が公開。
大体、クストリッツァのドキュメンタリーと言うと。ただ単にマラドーナの大ファンだから…ってだけで、会いたい!ハグしたい!サイン欲しい!ってだけの勢いだけで撮ってしまったドキュメンタリー映画『マラドーナ』の前歴があるだけに…。
…って事で。どうやら、ミュージシャンの肩書きも持つクストリッツァ。お気に入りのCDを探すついでに、前からちょっとだけ興味があったムヒカに向けてカメラを回してみた…ってだけの様な内容でしたね。
このドキュメンタリー映画ではホセ・ムヒカ本人がどんな人なのか?が分からないので…。
ホセ・ムヒカ伝説のスピーチ
https://youtu.be/F7vh7eQUtlw
同じスピーチ 子供の絵本用読み聞かせ版
https://youtu.be/Tm19sDQFMLM
池上彰との対談より
https://youtu.be/Wr72ClZ2Pcg
そして、奇妙なこの大統領に絶えず密着したジャーナリストの書いたムヒカ本の中から、幾つか人となりが垣間見える発言を。
全ての発言は、角川文庫 ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領 より抜粋
色んなところからジャーナリストが自分に会いにやって来るのは、私がいつも彼らにフックを浴びせるからだと思う。それは私のせいじゃない。私はただ自分のありのままのを話し、好きなように生きているだけだ。信じられるのは、これからそれが変わってしまうということだ。世界各地で、こんなクソみたいなじいさんに関心が向けられていることがどうしても信じられないという連中は多い。私はそれについては特に何の努力もしていない。どこであろうと、私は好きなように生きているだけだ。自分は貧しくなんかない。貧しい人間というのは、いつもカネばかり追いかけ、それにとらわれている人間のことを言うのさ。
24ページより抜粋。
一般市民と統治者の間にアパルトヘイトが生じることがある。生活スタイルというのは一見取るに足らないことのように見えるが、そうじゃない。そこには政治家に対する不信感もある。国民は、大統領になるやつはみんな同じだと思っていて、最後には政治にものすごい不信感をもつようになるんだ。
〜 中略 〜
私がいつも言っているのは、「自分の考えに従って暮らそう。そうしなければ、暮らしぶりに合わせて物事を考えるようになってしまう」ということだ。これはいつの時代にも言えることだ。ひとが自分を正当化するために用いる言い訳の数は半端ない。このとんでもなく非効率な政府では、何でもかんでも正当と認められてしまうわけで。こういう連中は絵空事のような世界で暮らし、権力者におべっかを言っているだけのごますり連中に囲まれるようになるのさ。これは危険極まりない。だが、これと同じ状況を色んなところで見てきた。
101〜102ページより抜粋。
チャーチルは、そうしなければならないときにロシアのスターリンと同盟を結んだ。左派や右派という違いを越えて、国を率いる人物はプラグマティックでなければならない。常識もしっかりと持っていなければならない。常識こそが最良のイデオロギーだからだ。チャーチルでさえ、必要ならば「スターリンとともに」と言った。チャーチルは反共産主義だったのにもかかわらずだ。政治について学ぶには、こういった人物について研究しなければならない。
255ページより抜粋。
オバマは、アメリカの他の大統領と比べると急進左派だ。だから、言ってやったよ。「アフガニスタンから撤退しなさい」とね。オバマは笑っていた。彼には通訳がついていた。私も簡単な英語がわかるが、彼らが話すと何を言っているかまったく理解できない。
オバマにはカリスマ性があり。品があって立派だ。(2012年)あのサミットでは、アメリカを非難するスピーチがニ十以上あったが、オバマは我慢して聞いていた。私のスピーチが一番攻撃的でなかったと思う。オバマは辛抱強く聞いていたし、それはそれで尊敬すべき態度だと思う。私は彼に言ったんだ。「あなたはアメリカが私たちに与えられる最高の大統領です」とね。現在のアメリカの置かれた状況から考えると、オバマは最高の大統領だ。
256〜257ページより抜粋。
母親になることほど大きな喜びも苦しみもないと私は思う。女性は私たち男性より優れた存在だ。なぜなら命という贈り物を与えてくれるからだ。それ以上に大切なことは何もない。プチブルジョワに感化されて、子どもを産むことを忘れてはならない。年をとったときに、それがどれほど大切なことかに気づくからだ。(インタビュー相手に)お前はまだ若いからわからないかもしれないがね。もし神聖さというものが存在するのなら、それは年輪を重ねた女性に近いところにあると思う。
家庭に残って子どもの世話をするのは圧倒的に女性が多く、その割合は貧しい層にいくほど増える。彼女たちをもっと尊敬すべきだ。私は今流行りのフェミニズムに関心はないが、女性の力は信じている。女性はとても大切な存在で、そうゆう流行よりももっと価値があると思っている。
282〜283ページより抜粋。
時間は幸せになるために不可欠の要素だ。少なくともムヒカはそう信じている。インターネットでソーシャルネットワークに費やす時間や、テレビ画面を見ている時間ではない。これは時間の無駄以外の何ものではない。しかし残念ながら、そのような時間の使い方をする人が増えているのもまた事実だ。必要なのは、日々の最も基本的なことに時間を費やすこと。
〜中略〜
大統領として最後の訪問地(フィンランド)となるこの地で、「この国では人生というものが最も大切にされている」と、その夜のわすかな聴衆に向かってムヒカは囁いた。その逆の例として、人々が働くために生きているようなシンガポールや、人々が救いやより高位に到達するために死を選択するイスラム諸国の過激派を挙げた。確かに快適に暮らすためには働かなければならないが、何よりもまず人生を生きなければならないのだと、長い空の旅で疲れ切って頭がぼうっとしている一行に向かって力説した。
296〜297ページより抜粋。
今の時代には言葉があふれているが、中身がない。ムヒカがほとんど無価値だと思っているバーチャルなコミュニケーションで世界は飽和している。彼にとってソーシャルネットワークとは、真の意味での交流を避け、意味のない運動や数時間しか存続しないリーダーを生み出す手段でしかない。
〜中略〜
ムヒカは「今の状況は何も良いことにはつながらない。建設的というより破壊的だ」と断言した。「でも、昔はテレビについても同じことが言われていましたよ」と、私たちは疑問を投げかけてみた。
すると、「いや、私は別に現状を否定しているわけじゃない」と言い、インターネット時代を支持する理由を説明しようとした。「国境がなくなった」ことを強調するために、「ウルグアイ人の女の子が中国人の彼女になって、そいつにイタリアから服をプレゼントすることだってできる」と例を出した。
これはポジティブな変化だ。ネット上で距離が縮まるだけで知識の向上や相互理解に役立つ。これによって可能性が無限に生まれ、生命の水を届けてくれる水量の増した川のように情報が流れるのだとムヒカは分析する。
298〜299ページより抜粋。
今人類は、未だ存在しておらず。どの国も準備することができないグローバル・ガバナンスを必要としている。太平洋で起こった海抜の上昇やプラスチック投棄の問題は、どの政府も解決できていない。社会と政治の乖離は重大な問題だ。このままでは何も良いことにはつながらない。そこで、アウトサイダーが〝救世者〟として登場するわけだ。政治家といっても色々で、くずみたいなやつらもいるが、彼らは結局自分たちの所属政党のためにしか行動しない。歴史上も、このようにしてあまり評判の良くない指導者たちが現れた。右派の政治家はいつも道徳に訴えるようなスピーチをして、民衆の前に現れる。そして政権を握り、すべてをめちゃくちゃにするのさ。
304ページより抜粋。
人間の特徴のひとつは、生きていくために不可欠な空間を征服するということだ。アフリカに始まり、地球全体を征服した。人間は地球を手に入れ、もはや手放すことはできない。しかし、資本主義的文化では、進歩というものはもっと個人的なものだった。資本主義は人間の内部にあるエゴイズムを助長し、人々は自分のことばかり考えるようになる。
〜中略〜
エネルギーは無限にあるのだから、資源も無限にあるはずだ。私たちは、宇宙の広大さに比べればシラミみたいなものだが、人類は資源を維持するために科学を重視して、人類全体として動かなければならない。だが、それができていない、こういう状況が私たちの種を滅ぼす可能性がある。自然はこれまでに、私たちにその偉大さを証明してきた。恐竜でさえ消滅させられるのに。なぜ私たち人間を消滅させることなどできないと言えるのか?
314〜315ページより抜粋。
2020年4月1日 ヒューマントラストシネマ有楽町/シアター1